褐色肌の大きな背中を見つけて、私は思わず目が輝いた。口元に手を添えて、すうっと息を吸い込んで、大きな声で彼の名前を呼ぶ。


「綱海にーにー!」
「おー、なまえじゃねえか」


ゴーグルに触れながら振り返った彼は人当たりのいい笑顔を私に向けると軽く手を振ってくれた。駆け足で彼の元へ近づくと、その大きな手が私の頭を撫でる。


「名前で呼べっつってんだろ」
「あっ…そうだった。ごめん、にーにー」
「いや、それ名前じゃねえって」
「ええっと…じょーすけにーにー…?」
「…やっぱ綱海って呼んでくれ」
「りょーかい、綱海にーにー!」


びしっと敬礼の真似事をしてみせると、何とも言えない表情を浮かべていた綱海にーにーの顔にいつもの笑顔が戻る。私は彼の笑顔が大好きだ。本当のお兄ちゃんのような優しさも、サーフィンをしている姿も、こうして私を撫でてくれる大きな手も、全部全部!綱海にーにーは私の頭から手を離すと、すぐ横に広がる大きな海へと視線を移した。


「今日もサーフィン?」
「おう。なまえも一緒にやるか?」
「ううん、私下手だもん。綱海にーにーがやってるの見とく」
「なまえだって練習さえすりゃあ上手くなれんのに。質はあると思うぜ。俺が言うんだから間違いねえって」
「綱海にーにーにお褒めいただき光栄でーす」


褒めてもらえるなんて嬉しいなあと思いながら私は彼のサーフボードを見つめた。そこでふと気付く。これから彼が波に乗りに行くなら、しばらくは構ってもらえない。砂浜で彼を見ているくらいしかできないんだ。…そう考えて、なんだかつまらなくなった。


「なまえ」
「んー」
「後で時間あるか?」
「へ?」


突然の綱海にーにーの言葉。少しいじけるように俯いていた顔を上げると、そこには私の大好きな笑顔を浮かべた彼。


「時間あんなら後で遊んでやろうかと思ってよ。…なーんて、子供扱いしすぎか?」


その言葉に私は慌てて頭を左右に振った。「え」と驚いたような表情に変わった綱海にーにーに、緩む頬を抑えようともせず彼を見る。


「じゃあ、後で私が行きたいとこに付き合って、綱海にーにー!」
「…おう、いいぜ。ちゃんと待っててくれんならな」
「うん、ちゃんと待ってる!」


いい子だ、ともう一度頭を撫でてくれる綱海にーにー。私は両腕を伸ばして彼に抱きつきながら大声で伝えた。


「綱海にーにー、だーい好き!」
「ははっ、俺もなまえが大好きだ!」


ぎゅうっと抱きしめ返してくれた綱海にーにーは、お日様の匂いがした。



幼い私とキラキラお日様

(いつかちゃんと名前で呼べる日が来るまで、待っててね!)



100108/幼い私とキラキラお日様

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