寒い、ああ、寒い。
まだ秋ぐらいの気温だろうと思っていた私がバカだった、そう公園のベンチに腰掛けたまま思った。ダメだ、寒すぎる。防寒具を一切身に着けていない私は両手で自分を抱きしめるようにして腕を擦った。少しでも温かくなることを期待して。でもそれは結局意味もなく、ただただ寒いというしかないようで。
すると隣に座っていた士郎くんが白い息を吐き出しながら緩い感じで(いや、本当に緩い感じ)呟いた。


「今日は寒いね」


うんそうだね、なんて言える私じゃなかった。
寒いからというのもあるけれど、それだけじゃない。だって士郎くんはもこもこでとても温かそうなマフラー巻いてる!少なくとも私よりは温かいはずだ!
私はなんだか悔しくなって、むっとした表情を浮かべて士郎くんを見やった。


「…士郎くんは私よりあったかそうだと思うけど」
「え?…ああ、これのこと?うん、これあったかいよ」
「…ああ、そう」


にこにこと私を見て笑う士郎くん。そうですか、あったかいですか、でも私はマフラー持ってないっての!ああ、寒い。
そのままがたがたと震えていると、ふと首元にもこもこした温かいもの。一瞬何が起こったかわからない私は、次の瞬間には士郎くんに横から抱きしめられていた。


「え、ちょ、士郎く、」
「ほら、こうしたらなまえちゃんもあったかいよね?」


「ね、」と言う彼はとても笑顔で。私の首には士郎くんのマフラーが掛かっていて、さっきまでの寒さが嘘みたいに、温かい。なんだかとても幸せな気持ちになって、私も笑って士郎くんの胸に頬を寄せた。


「うん、あったかい」




だからもっと抱きしめて


(ありがとう、士郎くん)
(どういたしまして、かな)



***
マフラーが恋しい季節になりました。


091123

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