「振られたんだ」
「…そう」
「大好きだったの」
「うん」
「永遠だと思ってた」
「うん」
「…でも別れた」
「そうだね」


私の視界はぼやけている。私の目からは大粒の涙が零れている。目の前には大切な親友がいる。彼の名前は一之瀬一哉。そして私を振ったのは、土門飛鳥。優しい土門はいつでも私の隣に居てくれて、好きって言葉をたくさんくれて、たくさん愛してもらってた。幸せだった。でもそれは私だけだったらしい、先刻1分23秒前、一言「別れよう」との言葉だけを頂いてしまったというわけだ。引きとめようとはしなかった、だって、彼が決めたことだから。私が止めても、優しい彼のことだ、自分を押し殺してでも一緒に居てくれようとするんだろう。だから、だからだ。


「永遠なんてないんだね」
「少なくともこの世には」
「ずっと一緒に居ようね、なんてもう言いたくないな」
「言う必要ないんじゃないかな」
「…恋しなければいいだけの話だもん、ね」
「それは違うよ」


悲しくて苦しくて胸が痛い。いつも私と土門の間をにこにこ笑って見守っていてくれた一之瀬は、私にとって一番の友達であり、親友だ。彼は俯いて涙を零す私の頭に軽く手を乗せ、優しく撫でた。その声色まで優しくて、なんだか、今まで知らなかった人のよう、な。


「恋はするべきだけど、永遠は誓う必要ないってこと」
「…もう、恋は疲れたよ」


大好きで大好きで、これ以上ないってほど溺れていたはずなのに。私は失敗してしまった。目が腫れて痛いな、などと考えながら私はふにゃりと笑いながら顔を上げる。
刹那のこと。顔を影が覆い温かくて柔らかいものが唇に触れて、離れた。ぽかんとする私と対照的に、一之瀬はいつもと変わらない笑みを浮かべている。


「それは困る。次が控えてるんだからさ」
「は…い…?」
「今までは土門の彼女だから大人しく応援してたけど、あいつが君を泣かすならもうこの役は終わりだ」


その表情に真剣さが灯って、一之瀬の手が私の濡れた頬に触れる。今の私は汚いよ、そう言いたいのに目の前の一之瀬に圧倒されて声がでない。心臓の音がやけに大きく聞こえる。とくん、とくん。


「…一之瀬、」
「なまえ、俺の方が土門の何倍も何十倍も君のことが好きだよ。俺ならなまえを泣かせない。絶対、約束する。だから付き合って」


普通順番が逆じゃないのか、キスと告白って。そんな些細なことを気にしている余裕すら私にはなかった。ただ真剣な一之瀬なんてサッカーの時以外見たことなかったし、いつもにこにこしている彼がこんな表情を浮かべることも知らなかった。親友だと思っていた彼を、初めて男の子としてみた瞬間。
今の私が傷付いていたから、一之瀬の告白がより一層輝いて見えたのかもしれない。ただの慰め代わりにしていたのかもしれない。もしかしたら私は心の何処かで最初から一之瀬に惚れていたのかもしれない。本当のところは、私自身にも今は断言できない。それでも私の腕は勝手に伸びていて、一之瀬の背にそれを回し、ぎゅうっと抱きついた。
大好きだった彼に振られて、3分後の出来事だった。



彼氏いない歴3分

(ただ寂しかっただけなのかも、しれないけれど)




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100103/彼氏いない歴3分

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