「なまえっ、なまえっ」
「なに?一之瀬くん」
「好きだよ!」


えへへ、と笑いながら言う一之瀬くんに胸のうちが温かくなる。かっこよくて、私の大切な彼氏。ストレートに気持ちを伝えてくれるから時々どうしていいかわからなくなる時もあるけど、でも私はそんな彼が大好きだ。


「うん、ありがとう。私も好きだよ」
「大好きだ」
「…うん」


そう言って私をぎゅうっと抱きしめてくれる。首筋に顔を埋められて少し擽ったいけど、甘えてくるような一之瀬くんがなんだか可愛くて私もその後頭部を優しく撫でた。癖のある髪を指先で弄んで、ふと目の前にある一之瀬くんの耳に目がいく。少し悪戯してやろうと、一之瀬くんの耳にリップ音を立てて口付けた。


「っん…!」
「びっくりした?」


耳元で囁くように言うと少し距離を取った一之瀬くんの顔は真っ赤で耳を押さえている。にやりと笑いかけてみる、けれど彼はすぐに私と同じような笑みを浮かべた。普段の爽やかな笑いなんかとは全然違う、意地悪な顔。


「よくもやったな、なまえ」
「え?よ、よくもって、」
「じゃあ今度は俺の番だ」


そう言って一之瀬くんは一気に私に近づくと頬に一度口付けて、耳をぺろりと舐めあげた。突然のことに驚いて変な声を出した私は慌てて口元を押さえる。わざと息が掛かるように喋る一之瀬くん。


「なまえが悪戯するのが悪いんだよ」
「ひゃっ…い、一之瀬、く…息がっ…」
「息が何?」


ふう、とわざと息を吹きかけられて、思わず肩が跳ね上がる。意地悪だ、でも、そんな一之瀬くんも堪らなく愛しい。私は一之瀬くんの背にぎゅうっと腕を回して、抱きついた。





「一之瀬!時と場所を弁えろ!!」


その時聞こえてきた叫び声。その方向を見ると顔を真っ赤にした土門くん。私と同じように目を向けた一之瀬くんはきょとんとした表情を浮かべていた。


「え、だって休み時間だし、何してもいいじゃん」
「だからって教室でそういうことするな!」
「いいだろ、別に。俺となまえは愛し合ってるんだから」
「お前…クラス全員の視線を感じないのか…」
「…俺はなまえの視線でしか感じない」
「気持ち悪いこと言うな!」


ばしっと土門くんの手が一之瀬くんの頭を叩いて、一之瀬くんは不満そうに頭を抑えながらゆっくり私から離れる。伝わってた温もりがなくなって少し物足りないと思いながら見上げると、にっこり笑いかけてくれた。私の大好きな、一之瀬くんの笑顔。


「じゃあ保健室行こっか、なまえ」
「えっ、で、でも、授業は…」
「一時間だけでいいからさ、なまえの時間を俺にちょうだい」


じっと見つめられて、手を握られて、私の心拍数は上がっていくばかり。頬が緩むのを感じながら、私は一度頷いた。


「なまえっ、愛してる!」
「私も愛してるよ、一之瀬くん」
「じゃ、行こうか!」


そう言って私を抱き上げる一之瀬くんはそのまま私の額に口付けて教室を出て行った。出て行く前に土門くんが何か呟いてたけど、


「…みょうじもみょうじで、重症だよなあ…」


…そんなの、幸せの絶頂にいる私には聞こえるはずもなく。



ラブマイプリンス!

(私の世界は、あなたでいっぱい!)




091224/ラブマイプリンス!

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