※微裏




愛しくて、愛しくて、愛したいと常に思ってしまう。彼女の全てを自分で浸してしまいたい、他の誰の目にも映ることがなくていい。彼女の愛しく可愛らしい姿を目にするのは、私だけでいい。


「んっ、は…ガゼ、ル…さま…」


甘く耳に届く声はまるで媚薬のようだ。聴覚から全身に染み渡り、私を支配する。理性など疾うの昔になくなってしまった。既に幾度かの行為で快楽というものに浸ってしまっている彼女の瞳は揺れていて、目端に浮かんだままの涙が私を誘う。
ああ、なんて愛しい。


「すまない、歯止めが利かなかった」


彼女の頬に触れる。ああ、もう止めなければ。こんな愚かな、ただ自分を満たすだけの行為。それによって彼女が満たされているかどうか、それすら分からないというのだから、私は愚かな男だとつくづく思う。
不意にか細く白い手が私の手の甲に触れた。彼女の目を見つめれば、薄らと微笑んでいて。


「いいえ、大丈夫、です。ガゼルさま、ですから」


私と同じダイアモンドダストのユニフォームに身を包んでいたはずの彼女の肌は、もう全て曝け出されている。白い肌に私が先刻残した痕が痛々しく映えていた。それは、その行為の激しさを物語るよう。
彼女はその優しさが、私を甘やかす最高の道具だということに気付いているのだろうか。


「ガゼルさまだから、私、この行為も幸せだと思うんです」
「こんなに求められてもか」
「はい、ガゼルさま」


幸せです。そう言って情けない顔で、眉尻を下げて、彼女は笑う、笑う。また煽られる。私の中の獣は欲望のまま彼女を欲しろと言う。まだ足りない、まだ足りない、と。彼女の笑顔を見る度に、声を聞く度に、それをとどめようとする私の思いは潰れていく。
見るも無惨な程に。


「好きです、ガゼルさま。大好きです」
「…私も、愛している」


私は彼女の額に口付けた。瞼に、頬に、鼻に、唇に。触れるだけの口付けを繰り返しまどろむ彼女に、獣は追い討ちを掛けようとする。私の理性は、またしても崩されてしまった。


「愛している、なまえ」
「あっ…ガゼル、さま…っ」
「すまない…」


謝ったのは果たして獣か、私か。またしても再開された行為に終わりはあるのか、彼女の世界を私だけにしたいと願うのは愚かな願いだろうか。月明かりに照らされた暗い室内で今日もまた私は自身に問う。どうしてこの世界は私と彼女の二人だけではないんだろうかと。
そしてまた彼女の首筋に、新たな華を咲かせるのだ。



優しさを被せて、愛しさで切り裂いた

(誰かこの気持ちを抑える術を、私に)



091223/切り裂きジャック

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