「あっ、なまえー!」


グラウンドの真ん中辺りから聞こえてくる元気で明るい声。以前はそこを使うことすらできなかったサッカー部が、今では堂々と使えてる。それも最近雷門中サッカー部が名をあげてきたからこそなのだろうと、しみじみ思った。
振り返った先には満面の笑みを浮かべながら校門へと走ってくる彼の姿。


「一之瀬くん、こんにちは」
「うん、こんにちは、なまえ。今から帰るの?」


そうだよ、と返事をする。一之瀬くんは私の大切な彼で、最近アメリカから転校してきたばかり。明るくて面白くて、でもサッカーをしているときは人一倍かっこいい、そんな一之瀬くん。気付けば私は、そんな一之瀬くんに恋をしていた。彼を想う気持ちなら、誰にも負けてないって言い切れる。
「そっか、」とまた私の大好きな笑みを浮かべる一之瀬くんに、私はひらりと手を振った。


「ほら、早く戻らないと。みんなが困っちゃうよ?」
「分かってるよ、でもなまえは俺の彼女なんだから、少しくらい許してもらえるって…」
「おーい、一之瀬!さっさと戻ってこーい!!」


一之瀬くんの言葉に被るようにして、サッカー部キャプテンの声がグラウンドに響き渡る。当然私たちにも聞こえたわけで、思わず笑ってしまった。


「…そうでもないみたいだよ?」
「…ご、ごめん」
「ううん。じゃあ、またね、一之瀬くん」


そういって踵を返そうとした矢先、背後から「なまえ、」と呼び止める声がした。何だろうと振り向くと、頬に柔らかい感触。
言葉に詰まる私を他所に、一之瀬くんはまた輝かしい笑顔を浮かべた。


「大好きだよ!また明日!」


え、え、
そのままグラウンドへと駆けて戻っていった彼の背中が段々小さくなるのに比例して、私の頬にも段々と熱が集まっていった。
ああ、やっぱり、



あなたには勝てません

フィールドの魔術師に、心を持っていかれてしまいました。




091122/あなたには勝てません

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