※ヒロインは雷門のマネージャー
「なまえ先輩!」
「おー、立向居くーん」
にこにこと無邪気な笑顔で走り寄ってくる可愛い後輩に、私は大きく手を振った。立向居勇気くんは円堂くんを目標として日々GKの練習に励んでいる。円堂くんがリベロにまわった今、雷門のゴールを守るのは自分の役目だって張り切ってるみたい。
「なまえ先輩、俺が練習してるとこ、見てくれてましたか?」
「もちろん、ちゃんと見てたよ。頑張ってるね、立向居くん」
「はいっ、ありがとうございます!」
私を見る目がとても輝いていて、ああ純粋な子だなって素直に思った。自然と笑みが零れて、そっとふわふわした頭を撫でる。びくっと肩を震わせると、立向居くんは耳まで真っ赤に染め上げて目を泳がせた。本当に可愛い子だなあ。
「せ、せせせ先輩っ…?」
「あんまり無理しちゃ駄目だよー。倒れちゃったら元も子もないんだから」
「お、俺、体調管理はいつでも万全です!」
「そう言う子に限って倒れるんだってば」
「俺は大丈夫です!」
…可愛いけど、こういうところは頑固だ。むっとしながら私を見る立向居くんに思わず苦笑が漏れる。こうなると言っても聞かないようだ、仕方ないと思いながらそっと頭から手を離す。
「…ま、倒れさせないようにするのがマネージャーの役目だもんね」
「あ、あの、」
「ん?」
そう言って立向居くんに背を向けようとしたけれど、不意に手首をぐっと掴まれた。どうしたんだろうかと表情を窺おうとしたけれど彼は俯いたままで、よくわからない。「立向居くん?」ともう一度声を掛けて、ようやく真っ赤な顔があげられた。
「もし俺が倒れたら…そ、その時はなまえ先輩が看病してください!」
「…へ?」
「お、おおお願いします!」
ぺこっと頭を下げる立向居くん。ええと、それは、つまり、
自惚れてもいいのかな?
(立向居くん)
(は、はい!)
(倒れないように気をつけるなら、ね)
(…もちろんです!気をつけます!ありがとうございます!!)
(本当に素直な子だなあ)
091208/自惚れ