※ヒロインは対人恐怖症



初めてあいつに話しかけた時、俺はどうすればいいかわからなかった。いつも貸してもらえないグラウンドの近くで練習する様子を、いつも誰かに見られていると気付いていた。それが今、俺の蹴ったボールが足元に転がったままの女の子。俺はただ、そのボールを取ってくれって声を掛けただけだったのに、


「あっ、う、こっち、こないで…!」


って、怯えた目で俺を見てきたんだから。初対面で、だ。いつも見られていたのは、嫌われていたからなんだろうか?なんだか申し訳ない気がして軽く首を傾げた。


「え、と…悪い、俺何かしたか?」
「ご、ごめんね、ごめんなさい、私、人が怖くて」


あなたが目の前でいるだけで、震えが止まらないくらい。
そう呟く彼女は言葉の通り尋常じゃないほど震えていて。でも、それなら不思議なことが一つある。


「じゃあ、どうして俺のこと見てくれてたんだ?」
「えっ」
「結構近くで見てくれてるよな、いつも」
「気付いてたの…?」
「勿論!」


にっと笑いかけると目の前の女の子は少し緊張を解いたようで、見て分かるほどの震えが少し治まった。それを確認してからそっと両腕を伸ばす。びくっと大袈裟に肩が揺れるのが見えた。


「ボール、投げてくれるか?」
「あっ、あっ」
「俺に触らなくていいから、投げてくれ。俺、これ以上近づかないぜ!」


安心しろよ、と言うものの少し申し訳ない気持ちが残る。自分だからという理由じゃないにせよこの女の子を此処まで怯えさせてしまったことに対して。だからボールだけ取ってすぐに戻ろうと思ってた。
女の子は少し躊躇してからボールを拾い上げると視線を落としながら、ぽつりと言葉を漏らした。


「あ、の」
「ん」
「私、みょうじなまえ、です!」
「…うん」
「え、円堂くんと、な、なか、仲良く、なり、たい」
「…へ?」
「円堂くんを怖いって、お、思いたくないの!」


顔を真っ赤にして涙目でそう伝えてくる女の子…みょうじに、俺は目を丸くする。だって女の子にこんなこと言われたの初めてだったし、よ、よく見るとすごい可愛い子だし、仲良くなりたいなんて、そんな。
普段なら何も考えずにすぐに仲良くなれる、それが俺の特技だと思ってた。いつもの俺はこう言われてどう答えるんだろう?そう考えて、咄嗟に出てきた言葉。


「さ、」
「…さ?」



「サッカーやろうぜ!」



「え…」
「ま、まずはサッカーやって、仲良くならないか?みょうじ」
「わ、私、すごく下手、だけど、いい?」
「おう!下手とかそういうの関係ないって!」
「…じゃあ、えっと、一緒に練習させてもらおう、かな…」


とりあえず、結果オーライ!


091206/結果オーライ!

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