※吹雪が雷門中に通っている設定






がたん、ごとん。
静かな電車の中、聞こえるのはこの音だけ。適当な座席に腰掛けてる私は、ちらりと視線を斜め前へとやった。毎朝同じ車両に乗ってる、雷門中の制服に身を包んだ彼。ふわふわの白い髪に長い睫毛、愛用なのかいつも付けているマフラーに手を添えて、今日は本を読んでいる。
実のところ、私は彼に一目惚れというものをしてしまったらしい。高校2年生にもなる私が、だ。相手は中学生(多分2年か3年だろう)だし、ただ毎朝同じ電車、同じ車両に乗っているというだけ。私が知っている彼のことと言えば容姿と雷門中に通っているということだけで、名前も知らなければ声だって聞いたことない。それでも、一目惚れしてしまったのだ。
朝の通学時間にちらりと彼を見るのが毎朝の楽しみ。話しかけることは愚か、見るだけ。今日も気付けば私が降りる駅についてしまった。名残惜しいけど、今朝は此処まで。小さく溜息をついて、私は電車を降りた。














「どうすればあの子と話せるかなあ」
高校の授業も一通り終わり、あっという間に下校時間になった。私は大体放課後にはバイトをしている。そうでもしないと欲しいものが手に入らないのだ。携帯だって使っていたいし。ぽつりと言葉を漏らしながら、今日もコンビニのレジに立っていた。
学校の友達や職場の人に相談しても「相手は中学生でしょ?」と溜息をつかれる。年齢が何さ、そんなもの愛さえあればカバーできるもん!大丈夫大丈夫!…自分を励ましてみるものの、やっぱり話す機会がないことには何も始まらない。どうしようもないか、ともう一度溜息を一つ。
そんな中自動ドアが開いて人が入ってきた。憂鬱な気持ちになりながらもあたしは仕方なくいつものように声を出す。


「いらっしゃいま…せ?」
「あ、」


顔を向けると、まさかの展開。其処にいたのは私の頭の中を一杯にしている電車の彼だった。驚くのはそれだけじゃなく、その彼が私の方を見て小さく声を漏らす。え、どういうこと?


「毎朝、電車で会いますよね」
「え、し、知ってたんです、か」
「うん、ずっと見てたから」


にこ、と柔らかく微笑む彼。その表情が私に向けられているものと分かるだけで幸せなのに、見てくれてたなんて。


「僕、吹雪士郎って言うんです」
「は、はい」
「君の名前は?」
「あ、えっと、みょうじなまえ」
「なまえ、さん。って呼んでいいかな?」
「うん、うん!あ、えっと、吹雪くん」
「士郎、でいいですよ。なまえさんの方が年上だし」


敬語が含まれた、何処かおっとりした口調でそう告げられる。それから「ずっと言おうと思ってたんだけど、」と私に向かって微笑む吹雪くん…士郎くんは言葉を続けた。


「なまえさん、僕と友達になってくれませんか?」


ああ、そんなの、答えは決まってる。



「もちろん、喜んで!」

(年の差なんて関係ないよね!)





***
年の差があっても吹雪くんなら大丈夫な気がする。


091203

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