「さーくまー」
「ん?」
「キス、して」
部屋に遊びにきていたみょうじがいきなりそんなことを言うものだから、俺は危うく飲んでいたスポーツドリンクを噴き出しそうになった。危ない危ない、慌てて口元を拭いながら恐る恐るみょうじを振り返る。
「な、なんだよ、急に」
普段はそんなこと、一言だって言わないじゃない、か。
むしろ俺の方ががっついて求めてるくらいなのに。
「別に、したくなったから。ねー、してよ」
「してって、おま…」
改めて言われると逆にこっちが照れてしまう(柄じゃないのは分かっているが)。思わず顔を背けると、隣に座っていた彼女は少し距離を詰めてきた。あ、近寄るな、馬鹿。
「佐久間ってば」
「…」
「…してくれないなら、こっちから襲っちゃうぞー?」
「は?」
不可解な言葉に目を丸くしてなまえへ視線を戻す、と、同時。
ちゅ、
唇に柔らかい感触を感じた。頬に熱が集まっていく。
「…、」
「あは、佐久間照れてるじゃん。可愛いなー」
にやり、という効果音がぴったり当てはまるような笑顔を浮かべる様子が気に喰わないのと(まるで馬鹿にされてるみたいだったから)、さっきの行動とで俺の中でぷつんという音が響く。
気付いた時にはみょうじの両手をベッドに押さえつけ唇を押し付けていた。
「ッん、ふ…!?」
「誰が、可愛いって?」
みょうじがしたみたく触れるだけの可愛いものなんかじゃなくて、何度も角度を変えて啄むように口付けた。暫く繰り返してから離れると軽く息を乱して頬を染める彼女と目が合う。
「は、あ…じ、ろう…?」
「っな」
そんな表情でいきなり名前を呼ぶなんて、卑怯だ。きっと今の俺は彼女に負けず劣らず顔を赤くしていることだろう。片手で口元を覆って少し考えてから、みょうじの頭の横に腕を立てた。まあ、元はと言えば全部目の前のこいつが悪い。俺の所為じゃない、ということにしておこう。
「誘ってきたのはなまえだもんな」
「は、い?えっ、あ、あたしはただ、キスしたかっただけで、」
「はいはい、問答無用」
さて、お仕置きの時間だ。
いただきます!
(今度はなまえの可愛いとこ、見せろよ)
(佐久間の変態…!)
(あ、名前で呼べって)
(い、や、よ!)
091126/いただきます!