「あつ、い」


はぁ、と吐息を一つ。
愛用のベッドの上で確認した体温計の温度は37,9度。風邪だ。そう分かった瞬間、私はさっきとは違い溜息を一つ。


「なまえ、溜息ばかりついてると幸せが逃げるよ」
「うるさい」


額に腕を当てていると赤く綺麗な瞳が私の顔を覗き込んできた。本来なら今日は彼、亜風炉照美と一緒に出掛ける予定だったんだけど、私が風邪を引いたから今日は無理と連絡したのだ。するとそれなら僕が看病に行くよ、とか何とか言い出して、今に至る。
看病も何も、さっきからじっと私を見てるだけなんですけど、照美さん。


「…何よさっきから、人のことじろじろ見て」
「いや、君が弱るなんて珍しいと思ってね。この姿、よく目に焼き付けておこうかと思って」
「出て行ってください」


全く、病人に向ける言葉か、今のは。何とかは風邪を引かないとか、そういう言葉を遠まわしに言ってるんだろうな、照美って意地悪いから。
そしてまた、溜息を一つ。相手をするのも少し疲れて、軽く目を閉じた。


「もー、本当につらいってば…。私もう寝るから、今日は帰って」
「でも僕にも出来ることはある」
「ん、なに…っ、」


不意に額に当てていた腕を掴まれてそのまま横に退けられる。次は何をするつもりなんだろうと気だるげに目を開けようとすると、すぐに額に冷たいものが触れた。初めこそ驚いたけど、それは火照った身体には心地よくて。視線を横に向けると、綺麗な金色の髪を垂らしながら私の額に手を当てる照美が優しく微笑んでいた。


「僕が隣にいたら、君は寂しくないだろう?」


その表情と言葉にときめいた、



なんて、言ってやらない!

(馬鹿。大好き)
(知ってるよ)




091125/言ってやらない!

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -