静かに流れる空間の中、私はじっと彼、ヒロトの横顔を見つめ続けた。彼はと言えば少し空いた時間ですらサッカーをしたいとサッカーボールをリズミカルにとんとんとコントロールしている。まったく器用な人だなあと思いながら相変わらず見つめていると、不意に溜息が耳に届いて、ヒロトはサッカーボールを手で受け止めて呆れたような表情を浮かべたまま私を見た。


「どうしたの、なまえ。さっきから俺のことじっと見て」
「あれ、気付いてたの?」
「それだけ見つめられたら誰でも気付くよ」


そう言って私に身体を向けるヒロト。そんなに見つめてたっけ、ああ、見つめてたね。簡単に返事を返し、私はふとさっきから考えていたことを口にした。


「ヒロトは一人でも生きていけそうだなあと思って」


もちろんながら、ヒロトは驚いたような表情を浮かべている。


「随分唐突だね」
「前から思ってたよ。私は一人じゃ生きていけないけど、ヒロトなら大丈夫そうな気がする」
「…それはどうだろう」


するとヒロトはにっこりと笑ってサッカーボールをそっと地面に置いた。釣られてそちらに視線を落としていると頬にひんやりとした感触を覚える。それはヒロトの手のひらで、何時の間にか彼が私のすぐ近くにまで近寄ってきていたことを示していた。


「確かに俺は一人でも死なないかもしれないけど、それは生きているとは言えないと思うんだ」
「…どういうこと?」
「なまえが一緒じゃなきゃ駄目ってこと。だって俺は世界で一番なまえのことが好きなんだから」


自信満々といった風に言い退けたヒロトに対し、私は茹蛸のように顔を赤くするだけ。どうしてそう糸も簡単に彼は歯の浮くような台詞を言ってしまうのだろうか。頬の熱は、どうやら収まる様子がないらしい。


「だからできれば俺を一人にしないで欲しいな」
「…馬鹿ヒロト」


素直になれない私も含め好きで居てくれる彼の笑顔は、今日も私の心を奪っていく。



100311/スロウスロウ

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