「名前くらいいいじゃないですか、神田」

「へえ神田って言うんだ、よろしくね神田。ついでに私はフランスと日本のハーフです」




僕の声に気づいたレナさんはこちらを見てにこりと微笑んだ。ラビも僕に気づいたのかよっ、と声をかけてきた。ラビに「任務お疲れ様です」と言えば「どーも」と一つ返す。神田は余計なことを言いやがって、と言いたげな目で僕を睨んだ。舌打ちというオマケ付きで。

彼女は握手を求めて手を差し出すが神田は鼻を鳴らして横を向いた。




「誰がお前なんかと握手するか」




神田が冷たくあしらうとレナさんは、先ほどと打って変わってしゅんと悲しそうにうなだれた。このパッツン本当に口が悪い。





「トイレ行った後、手洗うの忘れたから握手できないんだね」

「ちげえよ!」




前言撤回。全然悲しそうではなかった。

これを見ていたラビはおかしそうにお腹を抱えた後、レナさんの肩に肘をついた。





「ファーストネームはユウって言うんだぜ」

「可愛い名前だね」

「テメェら刻まれてぇのか」

「可愛い名前だね」

「繰り返すんじゃねぇ!」







本当にスゴい女性だ。ここまでおちょくられている神田に少しだけほんの僅かだが同情心を抱いた。わなわなと奮えていた神田は腰に差していた六幻に手をかけた。抜刀するつもりなのだろうか。

さすがにそれはマズいでしょ。抜刀寸前の神田の手を掴んだ





「本当あなたはカルシウムが足りませんね神田」

「離せモヤシ」

「じゃあイノセンスをしまって下さい」






腕を掴む力を込めれば「相変わらずうぜえ奴だ」と毒を吐き捨てて神田は部屋から出て行ってしまった。







「あらら行っちゃったー。
あ、初めまして私は一条レナ」

「僕はアレン・ウォーカーです、初めましてレナさん」

「さん付けなんてしないでいいよ。レナでいいよレナで」







にへ、と破顔させて彼女はアレンに握手を求め手を差し出す。僕はイノセンスじゃない右手で握手をした。そしてラビと同じようにブンブンと手を振った。これはなんの意味があるんだろう。

でも普通に気さくな人だ。何故か神田に対してはあまり気さくじゃなかったけど。

握手していた右手を見つめていたら、ちくちく感じる視線に気づいて顔を上げた。僕より少し身長の高い彼女がまじまじと僕の顔を覗き込んでいるではないか。







「えっ、と?何か…?」






途切れ途切れに言葉を紡いで上目使いで彼女に訊く。彼女は顎に手を添えて顔を見たり頭を見たりしていた。あ、白髪が気になるのか。







「その髪は地毛?」

「あ、はいそうです」

「ふうん、そうなんだ」







あまりに見られているのでなんだかいたたまれない気持ちになる。視線を下に落とすと、ふと頭に違和感を感じた。彼女が僕の頭を撫でていたのだ。




「あ、の───」

「綺麗な白髪だね」

「へ」

「君の髪、綺麗だね」



撫でていた手が髪の流れに沿ってそっとアレンの髪を梳く。目尻を下げてふんわりと彼に微笑みかけるレナにアレンは心底ビックリしていた。あまりにいきなりの出来事で上手く反応出来なかったのだ。

アレンが驚くのは当然だった。この髪が、白髪が、綺麗なんて言われたのはきっと彼女が初めてだ。





「──ッ、!」







アレンは目を見開いて頬を染めた。

嬉しさからなのか恥ずかしさなのか解アレンはしどろもどろしながらレナの瞳を見据えて小さく言葉を紡いだ。

アレンの言葉を聞いてレナは目をぱちぱちさせて驚いてる姿を見て彼はハッとする。今、僕は何を─…。ものすごく恥ずかしいことを言った気がする。いや気がするじゃない言ってしまったんだ。途端にまた羞恥がアレンを襲った。

うわあああ、しまったうっかりしていた。なんてことを、なんて恥ずかしい台詞を言ってしまったんだ…うわあああ。






「いや、違うんですよあの…これはですね、えっと」

「うん」

「、え?」

「ありがと、すっごく嬉しいよ!」




ふはっ、と吹き出すようにまた笑った。なんてよく笑う人なんだろう、その笑みに釣られて僕も小さく微笑った。

そんなアレンとレナの様子を見ていた科学班のみんなは微笑ましそうに見ては、徐々に仕事を再開し始めていた。リナリーの側にいたコムイも眉を下げて口を弧にしてそっと笑う。




「リナリー」

「なに?兄さん」

「またこれから楽しくなりそうだね」

アレンはしどろもどろしながらレナの瞳を見据えて小さく言葉を紡いだ。

アレンの言葉を聞いてレナは目をぱちぱちさせて驚いてる姿を見て彼はハッとする。今、僕は何を─…。ものすごく恥ずかしいことを言った気がする。いや気がするじゃない言ってしまったんだ。途端にまた羞恥がアレンを襲った。

うわあああ、しまったうっかりしていた。なんてことを、なんて恥ずかしい台詞を言ってしまったんだ…うわあああ。






「いや、違うんですよあの…これはですね、えっと」

「うん」

「、え?」

「ありがと、すっごく嬉しいよ!」




ふはっ、と吹き出すようにまた笑った。なんてよく笑う人なんだろう、その笑みに釣られて僕も小さく微笑った。

そんなアレンとレナの様子を見ていた科学班のみんなは微笑ましそうに見ては、徐々に仕事を再開し始めていた。リナリーの側にいたコムイも眉を下げて口を弧にしてそっと笑う。




「リナリー」

「なに?兄さん」

「またこれから楽しくなりそうだね」

コムイがそう言うとリナリーはアレンたちをを見て「ええ本当にね」と笑みを零す。レナは神田が先ほど出て行ったドア先に一瞬視線を送った。三年振りに戻った教団、始まりは悪くはなかった。
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