みんみんみん

蝉の鳴き声が近くの木から聞こえてくる。本格的に夏じゃな。暑さの原因である太陽を疎ましそうに見上げるが、太陽はお構いなしに照らし続ける。

こんな暑さの中、執務なぞやっていられん。そう思ったわしは筆を机に置いて後ろに体を倒した。

(……全く暑すぎるわ)








「まっさっむっねっ様!何してるんですかー?」






人の自室に勝手に入って来た女はわしの小姓でもあり、右腕であるなまえが上からわしの顔を覆いかぶさるように覗く。







「……何じゃ貴様か」

「何じゃ、って…何ですかその態度!冷たい人ですね!」

「五月蝿いわ!目の前で喚くな!!」

「ま、政宗様のがうるさいですよぅ」






体を起こして怒鳴ってやればなまえは「びっくりしたぁ」と言って息を吐いた。







「執務、途中じゃないですか」

「馬鹿め。こんな暑い中執務など出来ぬ」

「んもぅ…いい加減ですね…」

「ふんっ貴様には言われたくないわ」

「えぇ、酷い」






そう言う割に顔は笑っておる。微笑む顔を見て自分の口元は少しだけ緩む。

なまえはふと何かを思い出したように手を叩き、再度わしの顔を覗き込む。







「実は今朝女中にすいかを冷やして貰ったんですよ」

「ほう…」

「今の政宗様の調子じゃ執務も終わらないみたいだし休憩がてらすいかでも召し上がりになりますか?」

「西瓜か…。気が効くではないか」

「、そうですか?」





体を起こして笑顔を見せてやればなまえは照れたように笑った。





「じゃあ女中に頼んできます。私は仕事が残ってますから後で頂きますね」

「待て」

「はい?」






立ち上がったなまえはこちらを振り返って小首を傾げる。わしは顎に手を添えてなまえを見上げる。







「お前の分の西瓜も女中に頼んで来い」

「…だって仕事、」

「そんなもの後回しにしろ。少しくらい休憩しても罰は当たらぬわ」

「…でも、いいんですか…?」






言葉は控え目だが奴の顔は喜んでるように見えた。否、気のせいではないな。






「二度は言わぬ、さっさと行って来け」

「……っはい!」








(……種が多いわ)
(飲んでしまったらどうですか?)
(馬鹿め!そんな事せぬわ!)








= = = = = = = = =
あとがき

政宗様がスイカを食べてたら大変可愛いだろうな。なんていう妄想のかたまり。お目汚し失礼しました。





.