「義経はいつになったら私と付き合ってくれるの?」

「ぶっ!!」








義経は元親さんとの鍛練を終え、休憩している二人にお茶を入れてあげた。

義経は私の言葉にお茶を盛大に吹いた。元親さんは奏でていた三味線から手を離して小さく笑った。









「ふ…唐突だな」

「そうですか?今が好機だと思ったのに。っていうか何吹いてんの」

「それはお前がいきなり…つ、付き合えなどと申すからであって……」







ごにょごにょと語尾の所がよく聞こえなかった。貴方いつもは無駄にハキハキと喋るんだから、もっとしっかり喋って欲しいな。

心の中で小さく愚痴を零した。
ちらりと義経を見上げれば目が泳いでいた。わぁ動揺してるよ。




「そんなに動揺しないでよ、ね?」

「ね?では無い!!大体女人がむやみにつ、つ付き合うなど破廉恥だ!!」

「うるさっ…!耳元で大声出さないで」

「…っ、…すまない…」






これで耳聞こえなくなったら義経のせいよ。それに誰が破廉恥ですか、正直なこと言っただけなのに。

お茶をゆっくり流し込みほっと息をついた。







「話戻すけど私と付き合ってよ」

「な、何故俺がなまえと恋仲にならなくてはいけないのだ」

「付き合いたいから付き合いの、悪いですかー?」

「開き直るな!元親、こいつに一言言ってやってくれ!」






焦った様子で元親さんに助けを求める義経。

元親さんは再び三味線に手を掛け音を響かせた。







「上等…せいぜい義経と恋仲になれるよう頑張るんだななまえ」

「はい!なまえ、頑張ります」

「元親!!」





義経が呼びかけるも元親さんは返事をする訳でも無く、三味線に夢中だ。

いい音だなぁ。
こんないい音が出る三味線を元親さんは武器にしているんだよね、なんか勿体ない。









「くっ、お前達戯れ事は大概にしろ」

「戯れ事じゃないよ、」

「俺は戯れ事にしか捉えられん」

「違いますー」






第一私が何も考え無しに付き合ってなんて言うものですか。

義経が最近私と話す時やけに目を泳がせ、顔を赤らめ、戦では一番に私を心配してくれる。

勘のいい私はこの態度を見て直ぐに義経が私に抱いてる気持ちが分かった。

分かったのはいいけど、いくら待っても義経は私に気持ちを伝える訳でもなく、ただ時間だけが過ぎて行った。

だったら私が動くしかないでしょ。




「どうしたら信じてくれる?」

「…そっれは、」

「本気なの。義経が大好きだよ」





襟元を引っ張って彼の唇を自分のと押し付けた。

義経はこれ以上無いってくらい目を見開いたまま固まった。

元親さんもこの行為には吃驚したらしく奏でていた音が止まった。





「おーい、義経ー?聞こえてるー?」

「……………」

「聞こえてないね」

「…凄絶に大胆だなお前は」

「私は悪く無いです、彼が動いてくれないせいだもん」





というより元親さん凄絶に大胆ってどういう意味ですか。何でも凄絶付ければいいと思ってるんですか。








「義経ってばー」



「……ない…」

「あ、反応した」

「…極まりない…」

「何が?」

「はっ破廉恥極まりない!!自ら…せ、せ接吻など!」

「だってどうやったら信じてくれるかなって」

「ほ、他のやり方だってあるだろう!」

「それしか思いつかなかったんだもの」






それに、義経が早く行動に移さないのが悪いんじゃない。奥手にも程があるよ。







「じゃあ返事はいつでもいいからね、でも出来れば今日中がいいな」

「いつでもじゃ無いではないか!」

「はいはいそうですね。でも早く返事しないと他の人と付き合っちゃうよ、元親さんとか」

「な!」






義経は私の言葉に驚愕した。

私はそんな事は気にも止めず、すっかり温くなってしまったお茶を一気に飲み干す。うん、温くなっても美味しい。







「ふ、…それもまた悪くないな」

「も、元親!!お前も何を言っている!」

「何を本気で怒っている、冗談だ」

「冗談に聞こえなかったぞ」






義経は元親さんを睨みつける。元親さんはさして気にしてない様子。

……大人だ。





「ふ…男の嫉妬は醜いな」

「元親!!」

「そう騒ぐな、邪魔物は消えるとしよう。
義経、源氏武者らしく男をみせたらどうだ、呆られてしまうぞ」

「ど、どういう意味だ!」

「自分で考えろ」







え?何、最後の方聞き取れなかった。何て言ったのかな、凄い気になるな。

元親さんは義経に言葉を残し、三味線を持って何処かに行ってしまった。元親さんって細いな。

なんて事をぼうっと考えてながら姿が見えなくなるまで元親さんを目で追っていた。

義経は顎に手を添え、考え事をしてるように見えた。

さてと、私もそろそろ行こうかな。そう思い腰を上げて前へ進もうとしたが、何かに引っ張られる感覚を覚え後ろを振り返った。








「あの?義経、裾伸びちゃう…」

「え…あ、すまない」

「いいけどね、何?」

「いや、そのだな…」

「うん?」






私は首を傾げる。
なんだろ?






「い、いいかっ。一度しか言わないからよく聞いておけ!二度も三度も繰り返さないからな!」

「?」




義経は勢いよく立ち上がり、覚悟を決めたように私の目を見据えて息を大きく吸った。





「お、お前を幸せに出来る奴はこの世界の何処を探したって俺一人しか居ない!よって俺の側にいろ!分かったな!!」





顔を真っ赤にさせ捨て台詞のように告白した義経に驚く暇も無く、彼は私の腰と後頭部に手を回した。






「…、あの…よ、義経…ち、近い…」

「分かったなら返事をしろ」

「わ、分かったよ…!は、恥ずかしいってっ」

「先程は自分から接吻した奴が何を言うか」






義経の手から逃げようとしたが、それを彼の手は許さない。がっちりと固定したままだ。







「俺から離れるな、いいな」

「………っ、ん」





肯定をしようとも直ぐ様唇を押し付け、私の唇から義経の舌が割って入ってきた。

先程は私に破廉恥だなんだと言っていたのに自分はどうなんだ。貴方の方がよっぽど破廉恥だよ、妙に手つきが慣れてる。

次第に息苦しさを覚え義経の胸板を強く押して彼はハッとしたように勢いよく離れた。







「……ぶはぁ…っ!苦し…かった……。なんか手慣れてるねアンタ」

「………………………………………………………………………………………何と言う事だ」

「はい?」





わぁ…なんか嫌な予感がする。






「よ、嫁入り前なのに…」

「嫁入りって義経が?」

「違うお前の事だ!
嫁入り前の女人に破廉恥たる行為を…!」

「あのぅ…?」

「わ、わざとでは無いのだ決して!気付いたらお前にせ、接吻を…!!」

「私は平気だよ」

「へ、平気だと!?
馬鹿を言うな!お前が良くとも俺が良くない!源氏武者たる者、破廉恥な!!」

「そんな事無いって。そんな事言ったらみんな破廉恥だよ」

「いいや、そんな事ある!!傷物になんかしてどう責任をとったら良いのだ!」





頭を抱えてうなる義経。

人の話聞いてないし、接吻の一つや二つ騒ぐことでもないと思うのに。義経はさっきから赤くなったり青ざめたりなんて忙しい人なんだろう。見てて飽きないや。そんな彼に近づいて肩をぽんっと叩いた。






「私にいい案があるよ」

「案だと…?」




この方法が一番手っ取り早い。にこりと爽やかに笑ってみせる。








「私が義経の奥方になればいいんだよ」






これなら責任とれるよね。

私がそう言えば今度は顔を赤らめ、……お前はいつも唐突だ。と小さく呟く義経がいた。







嫁入り前と婿入り前

(良かったな義経。話は全てなまえから聞いたぞ)
(あのお喋りが…!)






FIN



= = = = = = =
破廉恥言い過ぎだろ義経。




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