昔から一緒に居た政宗から良い物を見せてやるから部屋に来いと呼びだしされた。

軍事以外で政宗からの呼び出しなんて珍しい。胸を踊らせて早歩きで部屋に来たはいいけど、







「ふふっ、政宗様ったらそんな事したら怒られてしまいますよ」

「わしがそんなヘマをすると思うのか、おぬしは」

「そんな事…とんでもございません」

「ふん、分かっておるなら良い」



「・・・・・・・」








何 この状況。

政宗が私を呼んだ癖に何でこの人さっきから私を無視して侍女さんと仲良く話してるのよ。

しかもこの侍女さん、凄い綺麗なんだけど、羨ましいんだけど。お色気ムンムンだよムンムン。



「おーい」




少し離れた場所で座っている政宗に試しに話かけてみる。






「ほう?それで?」

「それで先日ですね、」


「…………」





無視かよあのヤロー。見向きもしないじゃない。てゆーか聞こえてるでしょ絶対!何で無視すんのよ。そんなに話に夢中ですかそうですか。

ああああ苛々する!







「おぬしは馬鹿な奴じゃな」

「まぁ、政宗様ったら酷い」






クスクス笑い合う二人。

完全に私の事眼中に無いよね。居る事さえ気づいて無いよね。いや、それは無いか。部屋に入った時政宗は「やっと来たのか馬鹿め」と言ったからね。その時はすでに侍女さんと話してたし。つーか誰が馬鹿よ。







「……して、この前」

「ふふっ、あらまぁ」







二人の姿をただボーッと眺めてた。相変わらず楽しそうに話す二人。政宗は無視するし侍女さんも話に夢中だし、私居なくてもいいじゃん。はぁ、とため息をひとつする。

いい物を見せてやるってこういう事ですか政宗さんよ。ちっとも良くないし。むしろ苛々する、何なのあいつ。









「もうっですから違いますって」

「違うのか?」

「違います、よ?」

「ふっ、わしに聞くな」







い、居た堪れない。この場に居たくない。自分の部屋に戻ろう。そして政宗に呪いの手紙を何枚も書いてやる。

その場で立ち上がって政宗達の横を通り過ぎようとした、が…裾をグイっと引っ張られた。







「おい、何処に行くのじゃ」

「あぁん?」







何よ今更。散々人を無視しやがって。あんたが無視した回数だけ私のガラスのハートは傷ついたっていうのにね!







「そう鬼の様な顔をするな」

「してないわよアンタの目は節穴かってんだ」

「………ふっ」







突如笑い出した政宗を見て私の苛々はさらに高まった。何笑ってんのよ、何が面白いのよ。私の怒りは最高地点突破しそうなのに。

ピクピクと眉間のシワが動く。






「お前はもう下がって良い」

「ふふ、では失礼します」







侍女さんは微笑みながら軽く会釈をして襖を開けて部屋から出て行った。

私は彼女の姿をじっと見ていた。やはり綺麗で立ち居振る舞いが優雅な人だ。







「政宗の見せたかった物って今の光景だったわけ?」




期待してたのにこんな裏切りって有り得ないんですが。私に綺麗な侍女さんとのいちゃつきを自慢したかったのかよ。








「何じゃ…なまえよ、嫉妬か?」

「は?違うわよ。気持ち悪い勘違い止めてよね」

「……ほう」






政宗を睨みつけたが彼はそれに怖じる事無く、口元だけ笑みを浮かべた。

瞬時腕を力強く引っ張られ政宗の胸板へと顔を突っ込むはめに。







「(な、何この態勢……)」





ま、政宗に抱きしめられてる。どどどどういう事、何でこんな態勢になってるの。

背中と後頭部に回された手が離れる事を許してくれない。突然の出来事に私はただ目を丸くする事しか出来なかった。











「本当の事を言え。妬いていたのだろう?」

「ち、違うから…」






いつもの政宗とは全く違う、甘ったるい声で問い掛けるその姿はいやらしく思えた。

こんな政宗、私は知らない。








「それなら何故貴様は苛々していたのじゃ。わしがあの侍女と話に夢中になっていたのが気に入らなかったのだろう」

「そんな、事ないし?政宗ってば自意識過剰」







強がるものの私の心臓はもうとうに限界を越してて、政宗の声や心地の好い匂いに頭がくらくらした。

顔なんて林檎の如く赤いだろう。







「離して、部屋に戻るから…」

「貴様は妬いたり照れたり忙しい奴だな」

「だから違うって言って、!」






顔を上げた時、政宗の顔が目の前で鉢合わせとなった。

彼の顔は端正な顔をしている。片目は眼帯で隠されてるけど、それがより一層彼の端正な顔を引き立たせる。

そんな政宗の顔を直視せずに目を逸らしてしまった。







「少しは素直にならぬか」








顎を掴まれ唇に温かい感触がした。それが接吻だと私は直ぐさま気がついた。

政宗の胸板をドンっと押した。





「ア、アンタななななな何をして!」

「接吻じゃ」

「口にしなくても分かるわよ!は、初めてだったのに」

「ふん、初めてがわしで良かったではないか」

「う、うるさい!」














(貴様を嫉妬させるため侍女に協力して貰ったのだが、思わぬ収穫を得たな)
(協力って…!まさか嵌めたのね!)










FIN





= = = = = = =
あとがっきー

攻める伊達さんが
書きたかった品物。

結局良いものが
見れたのは政宗様だけでした、的なお話。