「何度も言わせるではない」
















「お前に惚れておる」
















思わず茶菓子を落としかけた。否、落としてしまった。畳の上とはいえ流石に落としてしまった茶菓子は食べれないし、そんなはしたない真似が出来るはずがない。

いや…そんな話はどうでもいい。今わたしの目の前にいる独眼竜、伊達政宗はわたしに好きと言った、惚れていると。聞き間違いかと思い何度も聞き返してしまった。

わたしは驚きを隠せずただ目を丸くして目の前の男を凝視せざるを選ない。







「茶菓子を落としたぞ」

「ご、ごめん…なんか動揺しちゃって」

「ふん、気をつけぬか」






政宗の言葉に慌てて懐紙に包んでお茶の横に置く。目の前の男はわたしの動作を指の先までも瞳で追う。その視線になんだか妙に緊張して手が震えてしまった。

目を合わせるのが気まずくてただ正座をして目の前の畳を見つめる。

政宗は何を言うまでも無くわたしを射抜くような瞳で見下ろしていたと思う。








「なまえはどうじゃ」

「どうって…」

「はっきり申せ」

「そっそんな…急に、」





早く言え。

言葉にはしていないけど政宗の目はそう言っている。動揺と緊張で頭の中が真っ白だ。








「……よく、わかんない…」






ぽつりと零れた言葉。
政宗に惚れているって言われて自然と嫌じゃ無かった。むしろ嬉しかったぐらいだ。

でも小さいときから政宗と一緒にいたから政宗と恋愛なんてあまり想像が出来ない。分かるのは惚れてると言われて決して嫌ではないということ。

伏せていた瞳を見上げればいつの間に歩み寄った政宗の顔と見合う形となった。







「ま、」





ギシリ


畳が軋みを上げた。
政宗がわたしの足の間に割って入ってさらに距離を縮める。彼の手はわたし腰近くの畳に手を置き、押し倒すと近い形になった。

突如のことに顔を赤く染めれば目の前の彼は口角を上げ、わたしの反応を楽しむかのようにさらに距離を縮めた。







「あ、のっ
政宗…ち…近い、よ」

「わしにはちょうど良い、なまえの顔がよく見える」





林檎のように赤くなった顔がな。
耳元で囁かれると力が抜けたような感覚が全身に駆け巡る。







「…!…ッ」

「よく分からぬと申した割にはわしが喜ぶ反応をするではないか」

「なに、それ」

「分からずともよい」






クックッと喉で笑う政宗に怪訝そうに眉をひそめた。彼は体を退きわたしの頭に手を乗せた。




「…?」


「この続きはなまえがわしに惚れてからじゃ」

「っ、」

「楽しみにしておくが良い」







艶やかな笑みを零し彼は部屋から出て行ってしまった。胸に手を当てれば鼓動が激しく、息が上手に出来ない。頭の中は政宗の言葉でいっぱいだ。

狡い、ずるい、ズルイ。




彼は狡い。











はじめから計算していたのでしょう
(お前がわしに惚れるのも時間の問題じゃな)(ふ…不覚だぁ)





FIN


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アンケート第1位
攻める政宗さんにヒロインたじだじ。


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