この戦いの相手は清盛と呂布だ。女のお前は決して無茶はするな。戦が始まる前にアイツには十分注意を促した。






「呂布、いるんだね」

「そうだ。危険を冒す真似はするな、いいな?」

「うん」

「無茶は絶対するな」

「うん」

「……。ちゃんと分かっているのか?」

「分かってるよー」







これが終わったらちゃんと迎えに来てね、約束だよ。

そう残したのはアイツなのに奴の姿は見当たらない。目の前に広がるのは清盛勢の大量の妖魔の屍が地面に横たわる姿だ。

奴は何処を探してもいない。








「クソ…っ何処にいるんだ!」

「義経落ち着け、焦るほど見付かりづらくなるものだ」

「この状況で落ち着いてられるか!」




元親の言葉さえ頭に入らないほど今の俺は動揺していた。

もしかしたらアイツの身に何かあったのかもしれない。怪我をして動けないのではないだろうか。怪我以上の事が起こっていなければ良いのだが…。


(アイツは無事であろうな…)


唇を噛み締め俯いた。









「地面と見つめ合うなんて楽しい?」







聞き慣れた声に顔を上げれば探し求めていたアイツの姿が目に入る。

長い間、会わなかったわけでもないのに久々に会ったような感覚に陥った。








「楽しいわけあるか…、なまえ…」

「だろうねぇ」






無事であった。髪は多少乱れてはいるが特に怪我をした様子も無くあっけらかんとしていて、手には団子を確と持っている。そう団子だ。

団子?







「お、お前…何を持って…」

「ふぁんふぉひゃひぇほ(団子だけど)」

「食いながら話すな!!何故そんなもの食っている!」

「をなきゃへっひゃって(お腹減っちゃって)」

「だから食いながら話すな!!」





俺が怒鳴れば嫌々と団子を喉に通し飲み込んだ。戦場にも拘わらず悠々と団子なんぞ買いに行っていたのかお前は。

怒る気も失せ呆れ返るばかりだ。







「相も変わらず凄絶だななまえ(ベイーン)」

「ありがとうございます、お団子食べます?」

「ふっ…頂こう」

「貰うな!」






大量の妖魔の屍の中で団子を食う目の前の奴らには脱帽だ。清盛を退かした後、一目散になまえの元に来たというのに何なんだこの仕打ち。骨折り損もいいところだ。







「義経顔怖いよ」

「余計なお世話だ」

「顔が怒ってるじゃない」

「怒りたくもなるだろう」






どれだけ馬を走らせたと思っている、何かあったのではないかと内心冷や冷やしていたのだぞ。

そんな俺の気持ちも知らずにお前は…。







「心配してくれたんだ?」

「……別に、」

「来てくれてありがとう、すごく嬉しかった」


「そ、そうか…」







ありがとうなど、そのようなことを言われるとは思っていなかったから急に気恥ずかしくなって顔を背けた。何故か詰め寄るなまえに対し反射的に足を後ろに引いてしまう。

な、なんだというのだ。







「もうひとつ約束があるの」

「?」

「これから先わたしが危ない目に合ったら守ってね」

「な、」



「約束だよ」






小指と小指を繋ぎとめて指切りげんまんだね、そう意地悪く笑う彼女に全身が熱くなったのは気のせいではない。

触れた指は熱が冷めぬまま。







約束=振り回される
(クッ…!色香にま、惑わされたりはしないからな!)(あんたどんだけ)(反骨だな、義経)



FIN


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アンケート第2位
厳島の戦いにて。


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