始めに言っておくけど私はマゾじゃありません。恋人であるアレン・ウォーカーに毎回毎回会う度にけなされて毒づかれ嘲笑いされて、足を踏まれて(しかもブーツで)それを耐えてあのモヤシおっとあのアレンに付き合っているのはMだからじゃない、私の精神力が強いからだ!!










「いや、Mだろなまえは」

「Mじゃねぇよこのウサギ野郎!」

「どの口がモノを言うかー」







びよーん、と頬を思いきり左右に伸ばすラビ。いいい痛い!!ラビのこめかみには青筋が出ている。






「あひゃひゃ!ゆふひふぇ」

「オッケー許す」



手の離し方が悪かったのか最後ものすごく痛かった。私のほっぺが真っ赤になっちゃったじゃないのよ!

殺意を込めてギロリとラビを睨んでやる。







「おー怖、そんなんじゃアレンに嫌われちまうぜ」

「ふんだ。もうほぼ嫌われてるもん」

「いやそれは無いわ。アレンはなまえにベタ惚れだしな」

「ラビ私の話聞いてた?アレンは恋人である私に度の超えた意地悪をするのよ?最近思うんだけど私たち付き合ってるって言うのかな寧ろアレンは私が好きなのかな。ただ私の一方通行じゃないのかな。ねえねえねえ」

「落ち着け」






そんな事言われても落ち着けない。こっちは死活問題なんだ。






「アレンなりの愛の形だと思えばいいんじゃね?」

「イ ヤ よ!私はただアレンともっと恋人らしい事をしたいんだって」

「ああ、キスとか?」

「ばっ!そんな堂々とそんな言葉使わないでよ!」

「わー意外と純情。じゃあ何がしたいんさ」

「なにがって、」




だから、それは。あれよあれ。目を泳がせ、迫り来るラビの言葉にしどろもどろさせる。

ずっと前からアレンとしたかったこと。恥ずかしくて口にしなかったんだけど一つある。でも付き合ってから一度もそれらしい事してないから自分だけががっついてるように見えて言えない。

耳まで真っ赤になるなまえの姿を見てラビは彼女の言いたいことが何となく解ってしまった。





「つまり寝たいって「交換日記したいんだよね」

「顔赤くしてまでしたいことかよ!!」

「えっ、絶対楽しいよ」

「楽しかねえと思うよ俺は」

「ラビが楽しくなくても私が楽しいからいいの!」
「本当随分楽しそうですね」







ひんやり

温度がマイナス二度は下がった気がする。この聞き覚えのある声。…まさか。壊れかけのロボットのような動きで振り向いてみるとそこには私達が噂をしていた張本人がいた。





「げっアレン」

「あ?いちゃダメですか」

「な、何さー居たなら話かければいいのに水臭いさアレン。なあなまえ」

「そそそうだよ。私たち気づかなかったんだからさ!」

「気づかないほど話に夢中だったんですか」






顔こそは笑顔だがアレンの後ろのオーラは真っ黒なもんが出ている。これはアレンがいつもカードをしているときの顔だ!ブラックアレンだ!

私はラビの裾を引っ張って小声で話を持ちかけた。






「ちょっとラビ何かアレン怒ってるよどうしよう」

「どうするも何も悪いことは何も言ってないし」

「言ったよ!私言っちゃったよ!」

「そりゃ自己責任。自分の彼氏なんだからお前が責任取んなさい」


「何ゴチャゴチャ言ってんですか」

「いや何でもないですアレン公爵!!!」







アレンまじで怒ってるよ。もしかしてさっき私がアレンの悪口言ってんの聞かれちゃったかな。だとしたらヤバいわ!後でまた意地悪という名の拷問をされる。若干涙目になりながらこれから後に起こることに恐怖を感じた。





「そういや俺コムイに呼ばれてたんだった。じゃあな頑張れよなまえ」

「でえええ!?ラビィイイ!!???」






この状況で置いてくの?この状況で?助けてくれよラビイイ!!ああもう死んだ私死んだなまえエンドだわ。恋人期間もきっと終了だわ。さらば私の人生アンド私の初恋。







「なまえ」





いつもより低く響く声がやけに怖い。何をされるんだろう焼かれるのか煮られるのかそれともイノセンスで粉砕されるのか。ああもしかして別れ話か。


「ごっごめんなさい!さっきの悪口じゃなくて……」

「好きですよ」

「へ?え?」






アレンは普段の腹黒い笑顔じゃなくてふわりと笑って私の腕を引っ張り抱き寄せる。








「えっえっえ、」

「意地悪ばかりで恋人らしい事ひとつもして無かったですね」

「あ、それ、は」





意地悪、あれはやっぱり悪意があったのか。








「すみませんでした」

「そんな、謝らなくても」





アレンのこんな優しい声初めて聞く。力強く抱きしめられ、じんわりとアレンの体温が伝わる。温かくてアレンの心臓の音が心地よく感じた。







「そんなに恋人らしい事がしたいのならしましょうか」

「わあ交換日記やってくれるんだね!」

「いえそんなダサいことじゃないですよ」





さりげなくダサいと言ったことはスルーしよう。抱きしめられていた体をやんわり離されその言葉に首を傾げる。そしてアレンはにぃっこりと爽やかに笑う。それはもう爽やかに。

あの笑顔のアレンはマズイ。絶対に危ない事を考えてるに違いない!その笑顔に危険を察知して私は直ぐさま立ち上がる。






「なまえ?」

「交換日記じゃないならいいいい!!」





ダッシュでアレンから逃げ捨て台詞を吐いた。このままじゃ私の貞操が危ねぇ!





「待って下さいよ!誘ったのはなまえじゃないですか」

「勘違いこわああああ!!」






fin.