アイスクリーム

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入浴中、浴槽の中で悶々と彼のことを考える。今まで何度もわたしを彼女と重ねてしまうことはあったが、直接手が触れたのは今日がはじめてだった。

なんとなく、今日の彼はどこかが可笑しい。違和感を覚えながらもどうすることもできないわたしは、自分自身に憤りを感じながら入浴を済ませた。

リビングを覗くと、お酒の匂いがした。

テーブルの上にグラスと角を削られた氷、ウイスキーのボトルが並んでいた。彼は黙ってテレビを見ている。

わたしはそんな彼のすぐ隣を通り過ぎると、冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出した。いつもならわたしもグラスに注いでソファへ腰かけるところだが、今日は先ほどのこともあってか、隣に座る勇気が持てなかった。


「こっち来ないの?」


背後から掛けられた言葉に、胸が弾む。わたしは彼を振り返らずに答えた。


「すぐ部屋に戻るから……」
「ああ、そう」


彼の立ち上がる気配がする。足音がどんどんとこちらへ近づいてくる。
彼はわたしのすぐ後ろへ立つと、冷凍庫を開き中からアイスを取り出した。


「一緒に食おうと思って待ってたのに。残念だなあ。一人で食っちゃおうかなあ」


そう言ってにんまりと笑う彼。思わず彼の顔を見上げるわたしに彼はこう付け加えた。


「やっとこっち向いた」
「……もしかして、ちょっと酔ってる?」


わたしの頭の上に冷たいカップアイスが乗せられる。ソファへ向かう彼の背を追いかけ、隣に腰かけた。

それからは特に会話もなく、二人でアイスを食べながらテレビを見ていた。

ふと気が付くと、彼は背もたれに頭を預けて眠っていた。声を掛けるが、起きる様子はない。

カレンダーを見やると明日の日付には大きくバツ印が書かれていた。どうやら休みのようだ。

このまま寝かせて置いてあげよう。そう思い、彼の部屋から毛布を一枚引き出して、彼の肩へ掛けた。一度もぞりと動いたあと、心地よさそうに寝息を立てて本格的に夢の世界へ行ってしまった。

テーブルの上を片し洗面所で歯磨きを済ませ、わたしも眠りについた。











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