紅い華

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最初のソレは、指先からだった。

誤って切ってしまった左手の人差し指から、赤い雫が伝う。

机上にぽたりと落ちたソレは、瞬く間に深紅の花びらへと姿を変えた。

目を奪われた一瞬のうちに傷口からは深紅の花が咲き、指や腕に絡みつく茨はドクドクと脈を打っていた。

衝動的にそれらを掴んで引き上げるが、ズキリと鋭い痛みを感じるばかりで取り除くことは適わなかった。

急速に高まる鼓動、比例して脈を打つ茨に尚更恐怖心を掻き立てられた。


「何これ……」


呟いたその時、心窩部に不快感を覚え嗚咽が漏れる。同時に喉の奥から何かが込み上げてきた。

息が、できない。

薄れる視界の中、最後に捉えたのは、ひらひらと舞い落ちる深紅の花びらだけだった。







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