山手未央里の場合
1未
(よく、スケジュール管理が上手だねって言われる。違うの、ただそういう予定になったらいいのにって思うからそう動いてる)
本をベンチで読む未央里。
次第に近づく音漏れヘッドフォンの音。
2香
「……未央里」
3未
「香澄クン?また会ったね。愛菜は少し用事が出来たみたいだよ」
香澄、ベンチに座る。
4香
「…ふーん?それで俺に構ってほしかったの?」
5未
「んー、ふたりにね、訊いてみたくて」
6香
「……ふーん?そう?」
7未
「何で知りたいのかは、おっさんにきいてるからいいの。知った後どうしたいの?二人で仲良く共有するの?」
8香
「……さあな」
9未
「香澄クンも、香澄君も一人占めしたいはず。二人とも我が強いもん」
10香
「……まあな」
11未
「……だからさ、時間を知らなくても何れわかるよ。二人だからね」
12未
(そう、こんな言葉を投げているのも、そうであってほしいから。先を知ったって、このご時世、嘆くことばかりだってわかっちゃう)
13未
「……私は、香澄君とも香澄クンともお話ししていたい」
14香
「……未央里さんは変わってますよね」
15未
「あれの姪っ子だからね」
16香
「いえ。落ち込んでいるのを知っていて、励ましていますよね」
17未
「……それは」
18香
「……僕達の見分けを出来るのも、未央里さんだけです」
19未
「……香澄君」
20香
「その先、どうしたいかでしたね。あっちも似ていること考えてます。……ただ、戸惑っているのと、覚悟しているかの違いです」
21未
「……死なないよね?」
22香
「未央里さんの言った通り、我が強いのでそれは無いですね」
23未
「……そっか、そうして居てほしい」
24未
(変わるのは怖い。目に見えるときはとても。それでも変わらないように動くのは、至極難しいことだから、それでも)
25香
「どうしたいかは、そのときにしかわからないよ。…あとさ、未央里」
26未
「……んー?」
27香
「自分を犠牲にしてまで、時間無駄にすんなよ」
28未
「……え?」
29香
「まぁ、俺達との時間は無駄ではないだろうけどな。…………だろ?」
30未
「もう、その自信。ほんとに尊敬するよ」
31未
(そう、今出会えてる人とは、さようならよりまたねでありたいから。そうやっていつも予定を繋げていきたい)