香椎愛菜の場合
1愛
(人生って、上手く自分で進めていくもの、そう思っていたのは……自我が生まれて、勝手に思考を生み出した悩みの種。そう……)
未央里、ジェンがを積んでいる。
舞はそれを見ている。
2舞
「……また変なことしてる」
3未
「……ジェンガでピラミッド作ってるだけ」
4舞
「くっっっっだらねーっ!!」
ジェンガ崩れる。
5未
「あああああ!耳つんぼのわたしにはーっ!舞の言葉がききとれなかったなー」
6舞
「今からあんたのおじさんとこ行こうかなーっていいましたー!」
7未
「行ってらっしゃい、顔だけジジイはもういいや」
8愛
「……あたし。あんたのおじさん、気に入ってるわよ」
9未
「愛菜のやっていることに似てるからね。何でも屋」
10舞
「あんたのおじさん、下っ端に依頼者の恋人やらせたって本当?」
11愛
「……あんたと真逆なのね」
12未
「おじさんを酷い人にされるのは、少しカチンと来ますよ?」
13愛
「わかった。じゃあ、あんたが硬いんだね」
舞、メール受信確認。
14舞
「おー、愛菜。あんた最近未央里に突っかかるね」
15愛
「おじさん、いいじゃん。何でも屋」
16舞
「ふーん?まぁ、いいや。じゃあまた」
17愛
「……うん、また」
18愛
(いつもまたねと言えるかどうかもわからないのに、人は当たり前にまたねとつかう。またねなんて簡単には言えないのに)
19愛
「…………また、か」
20未
「愛菜。またねっていい言葉だよ。いつか会えるって言う時間の約束だよ」
21愛
「……鋭いね、未央里」
22未
「相手がまたねって言ったなら、それはもうまたね。言葉を蔑ろにしてるわけじゃないよ。その人が会いたいって言う口約束」
23愛
「……あたしは、またなんて使いたくないわよ。もうすぐ時計すらなくなる人に」
24未
「え?何、舞、死ぬの?」
25愛
「え?死なないわよ、バカじゃないの?」
26未
「いや、話の流れ的にどう考えてもそうじゃん!」
27愛
「勝手な想像してるのあんたじゃない。それより、あんたのおじさんとこに行きましょう」
28未
「え!?顔だけジジイの所、本当に行くの!?」