それでは二人に祝福あれ | ナノ



「あー!どうしよう!」

かれこれ10分近く経ったんではなかろうか。種を見比べては頭を抱えるクレアにグレイは心底疲れた顔をした。

こんな事ならついて来るんじゃ無かった。既に少し前の出来事を後悔するまで至っている。

たかが一食、されど一食。荷物持ちをしてくれれば夕食を奢ると言う話に乗ったのが事の始まりだった。見習いの身な上に今は給料日前。グレイにとって今、一食でも食費が浮く事はかなり大きな事だった。
だから、そこを計って話を持ち掛けたクレアにグレイはまんまと一杯食わされたのだ。

「悩むなら全部買えばいいだろうが」

「あんまり増えたら作業の効率が悪いのよ。それに育つ日数とかを考えれば、」

「なら一番早く育つのでいいじゃん」

「でも今年は新たな事に挑戦したいっていうか……」

ずっとこの調子である。苛立たない方が無理な話だ。
グレイは大量の荷物を運ばされる位は覚悟を決めていた。けれどそれを上回る位今の現状は過酷でならない。自然と浮かび上がって来る青筋がそろそろ限界を物語っていた。

「ならじゃがいもでいいだろ!?」

「えー!それってグレイの好物だからってだけでしょ!?」

「あー!もうっ!!」

今にも髪を掻きむしりたい衝動にかられながら、グレイは地団駄を踏んだ。なんとかしてくれ!と言わんばかりにカウンターで傍観しているだろうジェフに目を向けるが、彼は目も合わそうとしなかった。それにより更にグレイの苛立ちは募っていく。

「はいはい!じゃがいも決定!」

「ちょっと、勝手に決めないでよ!」

「勝手に決めないと終わんないだろうが」

そう言ってクレアに種を押し付けると、明らかに不満そうな顔をする。しかし確かに終わらないと思ったのか、クレアは種を戻そうとはしなかった。

よし、これで一見落着とグレイは一人息をつく。

「どうしよう……パンもいいけどご飯も食べたいしなあ……」

間髪入れず聞こえて来たクレアの言葉に、グレイの中で何かが鈍い音を立て切れた。







優柔不断なお買物
(二度とお前と買物に行くもんか!)



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