今日の晩飯当番は俺。
洗濯当番はクレア。
結婚前から変わらない、手作りのカレンダーに刻まれた当番表。
なーんにも変わらない俺たちの生活。
いや、少しは変わったか?
妻の帰りを台所で待ちながら、俺はぼんやりと考えた。
今まではずっと仕事上のパートナーとして牧場の未来を語っていたが、それにプラスして二人の未来を語れるようになった。
人前で手繋いでも照れるのは変わりないけど、振りほどいたりしなくなったし、新婚さんと持て囃されても、嬉しそうに笑うし。
そんな小さな事なんだけど、よくよく考えたらこれは大きな変化と言っていいだろう。
「ただいま。顔、にやけてるわよ」
「あっ、やべっ。おかえり!」
買い出し帰りの彼女の荷物を取りながら、にやけた顔を正す。
わざとキメ顔を見せて見たら、今度はクレアがニヤニヤする番だった。
「あっ、今日カレー!!」
匂いで気付いたのか、クレアの顔がパァっと明るくなる。
初めて俺が作った無駄に拘ったカレーを、彼女は散々褒めてくれたっけ。
それからこれは俺の得意料理。
それに、俺たちの野菜がふんだんに使ってあるんだ。不味いわけないんだが。
「ピート君特製カレーです」
席で嬉しそうに待つクレアにカレーを運ぶ。
ふふ、と笑みを漏らした彼女の視線は、やけに目立つハートに型どったライス。
「愛を込めました」と付け加えれば、「ハート崩すの心が痛いわ」と笑った。
そっからはひたすら俺らの自画自賛トーク。
「さすが俺らの野菜!」だとか、「今月も順調ね」とかリアルなビジネスの話題も含め、話題は尽きない。
よく飽きもせず数年この話をしたもんだ。いや、きっとこれからも。ずっと、ずっと彼女と生きて行くのだ。
「なあ、クレア」
「なあに?」
食べ終わった食器を片付けながら言う彼女の両手を取り、視線を強制的に俺に向けさせる。
仕事のパートナーから一転。ガラリと変わった雰囲気に気付いたのか、クレアが強張ったのが分かった。
「幸せ?」
俺と一緒に仕事して――
俺と結婚して――
色んな想いを込めての問いかけ。
答えは分かってる。
けれど、クレアの口から聞いたことはなくて、つい言わせたくなった。
それを分かってるのか、クレアは照れくさそうになんとも言えない表情で俺を見ていた。
「決まってるじゃない」
「幸せ?」
いじわる。
クレアの顔が、そう言っていた。
分かってる。けれど俺は彼女の口から聞きたいんだ。
クレアの手を強く握り締める。
そして、期待を込めて彼女を見つめた。
「あなたと、一緒にいれて、幸せよ」
詰まりながらも紡がれたその言葉。
ああ、ダメだ。可愛い。にやけてしまう。
「あなたじゃなきゃ、ダメなの」
そんなトドメを刺された俺は、堪らず腕を強く引いた。
自然とすっぽりと胸に収まったクレアの頭を撫でながら、幸せを噛みしめる。
「俺も。クレアじゃないと無理」
牧場のパートナーも、夫婦としても、クレアがいいんだ。
「だから、ずっとそばに居て下さい」
コツンと額を彼女のソレにぶつけ甘く囁けば、彼女は恥ずかしそうに微笑んだ。
してやったりと思った矢先、柔らかい感触と共に軽めのリップ音。
「はい、あなた」
してやられたのは俺の方だ。
恥ずかしがり屋の妻からの精一杯の答えが嬉し過ぎて、幸せを噛み締めながら今度は俺から唇を重ねる。
家族が増えても、しわくちゃのジジババになっても、ずっと彼女と生きていこう。
俺たちはパートナーなんだから。
◆どれくらいお待たせすればいいのか…
サチコ様、ほんとに遅くなって申し訳ないです…
結婚後のピークレとの事で、ちょっとむず痒いですが甘め(?)な物を書かせて頂きました。
ドマイナーなピークレ好きの同志がいらっしゃって大変喜ばしく思っております(*^^*)
拙い文ではございますが、受けとって頂けると幸いです。
この度は相互ありがとうございました。これからも末永く宜しくお願いします!
そして、ピークレを盛り上げていきましょうね(笑)