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勢いよく目を開けば、そこはいつも通りの場所だった。
よく見慣れた天井に、毎日使っているベッド。

多少安堵を覚えたグレイは、ごくりと息をのんだ。同時に額から流れ落ちる汗を拭い、グレイは思い出したかのように隣を見る。

「……クレア?」

囁いた愛しい彼女の名前。
そっと存在を確認するように頬に触れれば、彼女の温もりが指伝いに感じられた。

「……ゆ…め…?」

まるで誰かに問い掛けるようにグレイは言った。
その問い掛けに答えるのは結局自分自身で、勝手に自問自答した後、細く息を吐く。

「……グレイ?」

小さく呼ばれた自分の名前に反応して、グレイはクレアを見つめる。

半開きの目に、ぼんやりとしたような表情でグレイを見つめるクレア。
頬に添えられたグレイの手から彼の深刻そうな顔に浮かぶ汗に視線を移し、クレアは目を見開いた。

どうしたのと尋ねようとした瞬間だった。勢い良く抱き寄せられ、つい言葉を飲み込んでしまう。

抱きしめた腕に徐々に力を込められ、苦しささえ感じるそれに、クレアは心配を覚えた。

「……どうしたの?」

ようやく出た言葉に、グレイは何も答えない。
それを見てクレアはそっと彼の胸に頬を寄せた。グレイの乱れた鼓動が、嫌というほど伝わる。

グレイと名を呼べば、彼はピクリと反応する。そして少し緩んだ腕に、クレアは漸く顔を上げれば、未だ深刻そうな表情を浮かべたグレイと目が合った。

「クレアがいなくなる……夢をみた……」

「私が……?」

こくんと頷くグレイに、クレアはクスリと笑みを零した。

だからあんな顔をしていたのかと思うと、不思議とグレイが小さな子供のように思えてくる。
そんな彼を安心させるように頭を撫でれば、グレイの顔から漸く緊張感が消えたのが目で見て取れた。

「私はいなくならないよ。私の居場所はここしかないもの」

「あ、そうだよな……。元はここがクレアの家なんだし……馬鹿だな、俺」

呆れたように肩を落として、グレイは笑った。
そんなグレイを見て、クレアはゆっくりと首を横に振る。その意味が分からず、グレイはキョトンとしてただクレアを見つめていた。

「私の居場所は、グレイってこと」

「……俺?」

「うん」

柔らかく微笑んだクレアに、グレイは顔を真っ赤に染め上げて俯いた。恥ずかしそうなグレイを包み込むように今度はクレアが彼を抱きしめる。

「だから、ずっと側にいるね」

耳元でそう呟けば、返事の変わりにぎゅっと抱きしめられる。恥ずかしいのだろう。今度は耳まで赤く染まっている。

そんなグレイが愛しくて、クレアも抱きしめる腕にそっと力を込めた。


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