▼06
今日は日曜日。大好きな一ノ瀬さんに会うことはできない。
『あああああ…一ノ瀬さん不足…』
「名前、デートしようぜデート!」
『別の人をお誘いください』
「いやー!俺は名前が良いの!名前とデートしたいのっ」
『ていうか、咲月はなんで私の部屋に居るの』
「スルーなんだ。…うん、俺めげないよ!……ぐすん」
なぜか私の部屋に居る咲月。それにしても、一ノ瀬さんに会いたい…。一ノ瀬、さん。
『っ…〜!』
「どうしただよー、名前」
『な、なんでも…ないっ!』
――――ばふっ
「痛い…」
私は抱きしめていたクッションを咲月の顔面に投げた。直撃してしまった。うわあ、痛そう。とりあえず、私は新しい冷たいままのクッションで顔を冷ます。き、キスされたことを思い出してしまった…。
「ん?名前、なんでそんなクッションに顔押し込んで……!」
『うわあああ!?咲月のばかっ!』
「わ、悪かった!ていうかなんでそんな顔真っ赤で……!」
『?』
「あいつと…、一ノ瀬と何かあったのか?」
『!!』
「(図星だったか…)」
顔熱い。ていうか咲月に見られたことの方がダメージ大きい…。
「俺、名前のこと好き」
『うん…いや、え?』
クッションに顔を埋めようとしたら、咲月が真剣な顔をして口を開いた。私はベッドを背もたれに、体操座りをしていて。そんな私を、クッションごと抱きしめてきた。
『ちょ…、咲月?』
「好き。大好き…。こんなに、大好きなのに…」
『……』
ぎゅうっと抱きしめてくる。なんでこんなに、咲月は泣きそうなんだろう。
「俺の名前、初めて綺麗って言ってくれて…。好きで。好きで。でも怖くて…。なんで……っ」
『咲月…。ごめんね。私も咲月のこと好きだけど、咲月とは違うや』
「っ…名前」
『咲月の名前すごく綺麗だし、いい名前だなって思う。でもね、私は一ノ瀬さんが好きなんだ』
「……うん」
『だけど…、咲月は私にとって大切なことには変わりないよ?いつも助けてくれたのは咲月だったし。傍に居てくれたし。でも…』
「分かってる。……一ノ瀬がいいんだろ?」
『うん…』
咲月の顔が、私の肩に埋まる。そして小さく呟いた。
――――今だけ、こうさせて。
ペンギンは、何も言えなくなった。
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