ペンギン恋愛成就 | ナノ
▼03

昨日の夕方、あんなことがあってから名前は上の空だった。






「おーい名前。名前さん?」

『はあ…』






駄目だ、俺の声も聞こえてない。俺も溜め息を吐いた。随分前、名前は俺に言ったんだ。「早乙女学園に素敵な人がいる」って。それ聞いた瞬間マジかよって思った。今まで男で隣に居られたのは俺なのに、なんでだよって。そして昨日会ったのがそいつだった。






「名前ったらどうしたの?」

「うん?いや、なんか俺に惚れたみたいぐほあっ」

『変なことを言おうとするから…』

「あら、一ノ瀬さんって人のこと?」






そいつの名前が出た瞬間、名前の肩がぴくりと跳ねた。俺の眉毛も反応したらしい。あの後、名前と俺の制服を見て、向かい側にある学校だと気づいたあいつは、「ああ、だから見えていたんですね」と名前に言った。










「向かいの…海中校の生徒ですか。でも、なぜそんな朝早くに学校に居るんです?」

『あ、あのあの!!私、朝早く学校に来て、音楽教室でフルートの練習してて!…それで…っ…えっと…』

「ああ、窓から…なるほど。では、なぜ私の名前を?」

『そ、そちらの先生が、名前…、呼んでるのを聞いて…』

「そうでしたか。ちなみに、あなたの他に、朝フルートを吹いている方はいらっしゃいますか?」

『?いえ…いないと、思います』

「そうですか…。ああ、もうこんな時間でしたか。すみません、私はこれから用事があるので…。あなたの名前をお聞きしても?」

『うえあ!?と、鳥明名前です!』

「鳥明名前…。では、またお会いしましょう」











ぬわぁああにが「また会いましょう」だ!絶対に会わせてやるもんか!完璧に俺を無視するし!あいつ嫌いだっ。






『はあ…』



「ああ!俺の名前が…!」

「あんたのではなかったでしょ」