「何やってんだよ」
『わ、翔君』
勉強の時間、私は面倒くさくて行かなかった。それを探しに来たであろう、執事の翔君。
「はあ…、またサボったんだろ?」
『ん。勉強とか面倒くさい。どうせするなら、家庭教師とかじゃなくて学校行きたい』
「そっか…」
草原に座り込む私の隣に、翔君も腰を降ろした。えーっと、次の台詞…。
『私、この家から出ていきたい』
「…………行くか?」
『(んん?台詞が違う…)』
「そんなに嫌なら、だけどさ。む、無理して此処に居なくてもいいしな。その……俺と、お前で…」
『え、』
「な、なんてな!冗談だ!ていうか無理があるだろ。この家から出て行くなんてさっ」
『だ、だよね!私血迷ったよ!』
あー焦った。翔君なんかかっこよかったし。本当に出て行こうかと思った。演技だけどね。
「おら、戻るぞ」
『…うん』
「どうしても嫌だったら、俺を呼べ」
『……?』
「俺様が楽しくしてやっから!」
へへっ、と得意気に笑う翔君。それは演技なんかじゃなく、いつもの翔君だったから…。なんとなく、手を握ってみた。翔君がびくっと反応する。
「!!」
『えへへ。翔君が執事で良かった』
「そ、そうか…(いや、俺は恋人の方が…って、何言ってんだ。これは演技だ、落ち着け俺。ていうか手!名前はいつまで繋いでんだよおおお)」
監督のカットがかかるまで、私は翔君の手を離さなかった。
「来栖君、葛藤してるね」
「カットかけますか?」
「…来栖君面白いからそのままで」
※とりあえず、映像の手を繋いだ部分だけ切り抜き、違うDVDにやいて来栖君に渡しました。(スタッフ一同)
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