「ほーら、もう寝る時間ですよ」
『眠れない…』
「全く…困ったプリンセスだ」
ベッドの上で布団をしっかり被る。それでも眠れない。私が眠るまで、レンは傍にいてくれるらしい。
『うー…ん』
「…何処かお連れしましょうか?」
『いいの!?』
「もう目も覚めたようですからね」
くすくすと笑うレン。演技、なんだろうかこれは…。あと、敬語のレン貴重だよね。
「ああ、でも今宵は雨です」
『(アドリブ…?)…ドライブも、駄目?』
「駄目です」
にっこりスマイル。うーわキラキラしてますがな。それより、ここからは外に出られないお嬢様が、何か話しをしてと執事に言うシーンなんだけど…。
『…何ベッドに上がり込んでるの』
「プリンセスが寝れないと言うなら、私が添い寝いたしましょう」
『い、いらない!私そこまで子供じゃないからっ』
「おや、プリンセスは大人の方をお望みで?」
『!!』
私の顔は真っ赤。後、顔面蒼白。これ演技でもなんでもないから。ガチの方だから。この鳥肌も本物だからね。
『ひっ…、あ、うん!なんか私寝れそう!ありがとうレン!』
「そうですか。ですが貴方が寝るまでが私の仕事。どうぞ目を閉じて夢へと足を運んで下さい」
『(ふざけるな帰れバカ!)あ、ははは…おやすみ、なさい』
「おやすみ…」
私が目を閉じた瞬間、布団の下でレンの手が私の腰を掴んだ。グイッと引かれ、後頭部にある手によって、レンの胸板に顔を押し付けられる。これはこんなドラマじゃない!なんて思ったけど、ここ最近ゆっくり休めていなかったせいか、本番中にも限らず眠気が襲ってきた。
「………レディ?」
ぼそっとレンの声が聞こえた。けれど私の意識など半分夢の中。
『…レ、ン』
「…?」
『あ、たか…い』
「!?(嘘、だろ…)」
すり、と擦り寄ってきた名前に、レンの肩が跳ねる。自分の腕の中からすーすー、と聞こえる寝息にレンは溜め息を吐きそうになる。自分から引き寄せておいてなんだが、レンはこの無防備な少女をどうしようかと考えた。だが離したくないのも事実。そんなことを思っていると、ようやく監督のカットが入った。レンは息を吐く。残念なような、助かったような…。
「起きませんねー」
「とりあえず、神宮寺君から離して…ん?」
「…どうかしましたか?」
「いや、名前ちゃん…離れないよ」
レンは自分の着ているスーツを掴む手を見て、仕方ないと、名前を優しく見つめた。頭をそっと撫でる手。それが良かったのかなんなのか、名前がまた擦り寄る。レンは本日初めての赤面をスタッフに晒したらしい。
「意外と神宮寺さんってシャイですよね(まあ、名前ちゃん限定か)」
「「「「 確かに… 」」」」
※その後、寝てしまった名字さんを神宮寺さんに抱えてもらい、楽屋まで運んでもらいました。真っ赤になった神宮寺さんが可愛いかったです。(スタッフ一同)
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