サッカーをした後、音也にジャージは洗って返すと言えば、そんなのいいのにって言われた。そう言い続ける音也を丸め込み、更衣室へと廊下を歩いていた。
「…名前?」
『あ、トキヤ』
「どうしたんです?ジャージなんか着て。しかも…。男物、ですね」
『あー、これは…』
説明をしようとすれば、ガシッと肩を掴まれた。か、肩からありえない音が聞こえる…。
「…どこのどいつですか」
『え…?』
「どこの馬の骨野郎の物を着ているんですか」
『ちょ、トキヤ落ち着いて』
「私は落ち着いています。それより早く名前を言いなさい、今すぐに。とりあえずその男を金属バットで殴りに行きます。それからジャージを脱いで下さい。そして私のを直ちに着ること、良いですね?」
『良くない良くない』
名前って言われても…。あなたのルームメイトの音也君です。そもそも私が借りたものだし。
「その男は絶対に下心があったに違いありません。自分の服を着させることは男の夢ですからね。名前のことをそういう目で見るのは許せません。私以外にはあってはならないことです!」
『いや、だから…(最後おかしい)』
「名前も名前です。どうして男の服を簡単に着たりしたんですか。もう少し気をつけるべきです。あなたは男に対して警戒心が無さすぎます。いつ襲われることか、私は心配でなりません。ああ、そうだ。襲われる前に私が襲ってしまえばいいんですね。そうすれば心配も無くなりますし…。名前、保健室に行きましょう」
『行くかあああっ!』
変な方向に意識がいったトキヤに、逃走体勢を取る。トキヤがにじり寄って来た。長い廊下のど真ん中。逃げたとしても、トキヤは足が速いから追いつかれてしまう。
『って、こんなことしてる場合じゃなかった!トキヤ、もうすぐ授業!』
「ええ、それがどうかしましたか?」
『着替えたいから、そこ退いて』
「ああ、なるほど…」
動いたトキヤを見て安心した。私は逃走体勢を解き、ほっと息をつく。安心できたのも束の間。私の体には、大きな影がかかった。
『え、トキ……!』
――――ガシッ
「着替えるんですよね?」
『ひ…!(笑顔が黒い!)』
「私も………、手伝いますよ?」
『いやああああああ!!担ぐなああああああっ』
「お仕置きです」
『下ろしてえええええ!!!』
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