少女Aのぽかぽか日和 | ナノ



「名前!サッカーしよう!」

『え?翔君じゃなく、私なの?』

「うん」

『でも、私サッカーとか…、そんなにしたことないよ』

「俺が教えるから!ね?」

『音也がいいなら、いいけど…』

「やりーっ!」



お昼の時間。教室の窓から外を眺めていたら、音也がやって来た。サッカーをしようと誘って来た彼は、既に私の手を取り、教室を出ようとしていた。



『あ、待って音也。私ジャージ持ってない』

「持ってないの?うーん。あ、俺の使う?ちょっと大きいけど、捲れば大丈夫でしょ」

『でも音也は?』

「俺は制服でやるからいいよ」

『本当?ありがとう』



そして私は音也のジャージを借りた。音也ほんとに優しすぎる。下を履いてスカートを脱ぎ、上はシャツの上から着る。腕を通して頭から被れば、ズボッと一気に入った。わ、本当にぶかぶか。



『音也ー、着替えたよー』

「ほいほーい……っ!」



先にグラウンドに行っていた音也は、リフティングをしていた。足首細っ!私より細いんじゃ…。ていうか、音也の顔真っ赤。太陽に当たりすぎた?



『音也、大丈夫?』

「へ?ああ、うん!大丈夫!うん…」



大丈夫、大丈夫と呟く音也。何かあったのだろうか。



『音也、さっきのもう一回やって』

「さっき…?」

『リフティング。かっこよかった』

「え、本当?」

『うん』



音也の顔がすごくキラキラし始めた。わあ、耳と尻尾が見える。わんこだなあ、本当に。なんて思っていたら、音也がガッツポーズをした。



「へへっ、ありがとう。じゃあ、もう一度やるね!」



そう言いながら、音也がリフティングを見せてくれた。おお、すごい。いつも教室から見てたけど、音也ってスポーツ完璧だよね。



『すごいね。私できないもん』

「教えようか?」



はいっ、と私はボールを渡された。とりあえず膝にボールを落として当ててみる。でも、一回目で何処かへ行ってしまった。



「だいじょーぶ、だいじょーぶ!こうやって…よっ、と」

『音、也…!?』



音也が後ろから腕を回して来て、ボールを持つ。右膝上げて。なんて、耳元で言われる始末。な、ななな、何プレイですかこれは!?(混乱)



「名前?…おーい、」



これがまた、どこかの女たらしみたいに、わざとしている訳ではないから質が悪い。背中の温かさとか…いろいろダイレクトすぎる!



『あの、音也…』

「うん、何?(超笑顔)」

『いや……なんでも、ないです』

「?」



満面笑みの音也に、何も言える訳がなく、そのまま時間は過ぎていった。



『(心臓煩い。もう本当に誰か助けに来て…』

「(…俺のジャージ。名前は着てんだよねえ…。今なら彼シャツのロマンが分かる気がする)」

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