連れ去られた後、必死の抵抗で翔君と一緒になっちゃんから逃れようと暴れた結果…、
「ああ?」
砂月さんが現れました。
『翔君どうする?眼鏡スポーンって窓の外いっちゃったよ。今頃お星様になってるね』
「だよな…。部屋にスペアがあるはずだから…俺取って来るな!」
『う、ん。お願いします…』
ありがたいよ翔君。でもね、砂月君と二人きりにしないでくれ。「早く帰って来るからな!」って……、早く帰って来てね!
「おい、小動物」
『しょ…!?え、いやなんで?』
「ぷるぷる奮えてっからだ」
『左様ですか…(あなたが怖過ぎるんです)』
いつの日か、彼にはファーストキスを奪われそうになったことがある。
『さ、砂月君』
「なんだよ」
『いや、えっと…』
名前を呼んでみたけど、何を話していいか分からない…!ピヨちゃん好きな顔ではないよね。
『…砂月君、ピヨちゃん好き?』
「好きじゃねぇ」
『ですよねー』
はい会話終了。とりあえず、どかっと椅子に座る砂月君の隣に私も座る。放課後のAクラスの教室はもう誰も居ない。夕日が照らすだけの教室。砂月君の横顔を見れば、黄色がかったミルクティー色の髪に夕日が反射して綺麗だった。
「この前…」
『え!?』
「何驚いてんだよ」
『え。その……まさか砂月君から話してくれるなんて思わなくて…』
「………」
少し仏頂面になった砂月君。横から見てても分かるや。少し笑ったら、仏頂面が深くなった。でも、夕日が当たるせいで、砂月君が照れてるようにしか見えない。
「お前、那月に…。ぬいぐるみ、あげたろ」
『ああ、うん。ピヨちゃんのね。なっちゃん好きだって言ってたから…』
「…すげぇ喜んでんだ、那月が」
『うん。渡した時もね、すごかったんだよ。渡したこっちも嬉しくなっちゃった』
「そうか…」
その時のことを思い出しながら、砂月君と話していた。なっちゃんの嬉しそうな顔を思い出すだけで、勝手に頬が緩む。すると、ぽん、と頭に重みが落ちてきた。それは紛れも無く砂月君の手で。見れば優しく笑った砂月君がいた。
『へへ。砂月君と話せて嬉しいな』
「……っ!」
「で、出て行きづれぇ……」
翔が廊下に潜んでいることなんて、二人は気づかなかった。哀れ、翔。
「哀れむなっ」
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