「うわあああああ!こっち来るなああああ!」
『…?』
放課後。先生に用があった為、少し遅くまで残っていた日だった。用事も済ませ、後は寮に帰るだけという時に、歩く廊下の先から、翔君の叫び声が聞こえてきた。
『…翔君の声、だよね?』
そして、ズドドドド…!という音と供に現れたのは、翔君と…。
「翔ちゃーん!なんで逃げるのー。これを着てくださーい!」
「んぎゃあああ!なんだよその気持ち悪い服!俺がそんなの着れるかあああああ!」
『………なっちゃんかあ』
また(なっちゃん曰く)鬼ごっこしてる。そんななっちゃんの片手には、フリフリのメイド服。なんだあれ。どうしてなっちゃんがそんなものを持ってるの。唖然としていると、翔君が私に気がついたらしい。
「!!…名前っ!」
『え!?』
少しの希望が見えたみたいに、明るい顔なのに泣きながら来る翔君。うん、可愛い奴めってなるよね。そして私の目の前まで来て安心しきった。けれど後ろにはなっちゃん。翔君は直ぐさま私の背中に隠れた。
「名前ちゃん!見てくださいこれ!」
『うん、うん。可愛いね。なんでキラキラしてるのなっちゃん』
「翔ちゃんに着てもらうんですよ!きっと可愛いだろうなぁ」
ほわわん、と何処かに飛び立ったなっちゃんを見ながら、私は苦笑い。翔君は未だ奮えながら泣いている。私とあまり変わらない身長。それでも彼の方が高い。でも可愛い。
「そ、そんなフリフリした女もの!俺様が似合う訳ないだろっ!」
「いいえ!絶対に似合いますよ。名前ちゃんもそう思いますよね?」
『へ?あ、ああ…うーん』
「そうだ!名前に着てもらえよ!」
『は!?』
「名前ちゃんには、ちゃんと違う服がありますから、それを着てもらうんですよぉ。だから翔ちゃんはこれ!」
『うん!?』
ち、違う服って…。さらっと爆弾落とした気がする。いつものテンションだから拾い忘れそうだったよ!
「あ、そうだ。名前ちゃんも一緒にお着替えしましょうよ!」
「んなっ!?」
『いや私は…!』
――――ガシッ
「さあさ!お着替えしましょうねぇ」
「『い、いやだああああああああああああああああああ!』」
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