「名前ちゃん、課題のここ分かりましたか?」
『ぜーんぜん。ほとんど白紙だよ』
「あんたねぇ、いつか呼び出されても知らないわよ?」
『好きですって?』
「なんで先生が告白すんのよ」
春ちゃんと友ちゃんと一緒に移動教室へ向かう途中、曲がり角に差し掛かった所で、私は誰かにぶつかってしまった。
『ぶっ』
「おっと…。大丈夫かい?おや、誰かと思えばレディ達じゃないか」
「げっ、神宮寺レン…!?」
「神宮寺さん!」
春ちゃんは、おはようございますと挨拶をしている。そして、友ちゃんは春ちゃんを守る体勢に。友ちゃん曰く、レンは春ちゃんに悪影響らしい。
『レンさん、そろそろ離して下さい』
「嫌だね。せっかくレディから抱きついてきてくれたんだ。そんな勿体ないことする訳ないだろう?」
『ぶつかっただけだからね?抱きつきにいった訳じゃないからね!?』
腰と後頭部に回る手。暴れてみても効果はなし。ここ廊下…!他の女の子達が怖いし、恥ずかしいからやめてほしい。レン、ともう一度名前を呼べば、今度は「仕方ないな」と言いながら抱きしめる手を離してくれた。
「もう少しレディの温もりを感じていたかったな」
『温もりとか…!その言い方恥ずかしいからやめてください切実にっ』
私が真っ赤になるのをくつくつと笑うレン。楽しんでる。わざとやってますよレンの奴め。私はレンの横を通り過ぎ、いつの間にか逃げたであろう二人の後を追いかける。でも、レンの横を通る時、肩に手が伸びてきて、ぐっと引き寄せられた。
『わわっ…』
「名前…今度はしっかり抱きしめさせてくれよ?」
『っ〜…!』
そう言った後に、耳にキス。そして一舐め。一気に私の体が熱くなる。耳が一番熱い。うん、あたり前だよね!肩を離したタイミングで、ばっと距離をとる。舐められた左耳を押さえながらレンを睨んだ。
『レンの……レンのバカぁぁああ!』
「ぶっ」
もう既に誰も居なくなった廊下には、笑いを耐える神宮寺が居たそうな。
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