「何?そんな顔して、僕に会えたのがそんなに嬉しいの?」

『そんな風に見えますか?』






朝、私は台所で皆のお茶でも作ろうと廊下を歩いていた。するとなんと、タラララッタラー。


▼ そうじくん に そうぐうした!






「何処行くの?」

『お茶煎れようと思って。総司君は巡察?』

「うん。面倒くさいなー。土方さんはなんでも僕に押し付けるんだから」

『日頃の行いが悪いからねー』

「何か言った?」

『いいえ何も』






ニコニコニコニコ。総司君のこの笑顔は危険信号。だってほら!その証拠にもう片手が刀に触れちゃってるよ!






「名前ちゃん、もう少し女の子らしくできないの?」

『え。十分女の子だけど』

「そっか…」

『おい哀れむな』






心底哀れむような総司君の顔に私は怒る。総司君はそんな私を見てケラケラ笑う。もう最悪だ!総司君の目の前で溜息を吐いてやった。そしたら「幸せが逃げちゃうよ」なんて言われる。いかん、殺意が芽生えてしまった。誰のせいだこん畜生。そして何事もなかったかのように羽織りを着た総司君。






『…気をつけてね』

「なーに?珍しいね」

『失礼な!』






一応、門までお見送り。そこには一番隊の皆さんがもう集まっていた。帰って来た時、皆の羽織りが赤く染まっていないことを願う。強いことは知ってるけど…。やっぱり、ね。総司君も、いつもはあんなことしてくるけど、居なかったら絶対に寂しくなるからね。






「じゃあ、行ってくるね」

『うん。…逝ってらっしゃい!』

「何それ。今そんな雰囲気じゃなかったよね?あんなことまで思っておいて何『逝ってらっしゃい』って。おかしいよね名前ちゃん。そんなに痛いことが好きなの?」

『いやあの…はい、すみませんでしたもう言いません』






悪いのはこの口?と言って頬を引っ張る総司君。痛い痛いと言えば、今はこれだけで終わってあげると、物騒な言葉が聞こえてしまった。気のせいだと願いたい。






「あーあ、やだなあ巡察」

『総司君!』

「何?また…」

『行ってらっしゃい!』

「……いい子にしてるんだよ」






ふっと笑った総司君に手を振る。見えなくなるまでしていたら、それを見た土方さんに「一人で何してんだ」と言われました。失礼な!一人でこんなことしますかっ。説明すれば納得してくれた。






「ていうかお前、仕事あんだろ?」

『はっ。そうだった!皆さんにお茶を煎れようと!』

「ちげーよ馬鹿。廊下の掃除、まだあんだろ?」

『げっ!』

「やっぱり怠けてやがったのか!」

『ナマケルダナンテ』






ていうか鎌掛けたわね土方さん!か弱い女の子に何をするの!そう言えばバシッと土方さんが持っていた書類で、思いきり叩かれた。






『女の子に手を挙げた…!』

「いいから仕事しやがれ!」

『へーい』










お見送りも大事なお仕事ですよ





(ていうか廊下の掃除て…一人でやれってのかあああああああ!)