『千鶴!』
「名前ちゃん…?」
庭で洗濯物をする千鶴に駆け寄る。手伝いに来たって言えば、笑顔でありがとうと言う千鶴にメロメロです。
「そういえば、さっきあの人が来てたよ。あきはさん、だっけ?」
『秋葉さん?』
「うん。名前ちゃんいるか聞いて来たから、頓所には居ると思いますって答えたんだけど…」
『分かった、ありがとう』
秋葉さんとは、私を此処に連れて来てくれた自称神様。
「え、俺?そうだなー。神様とでも言っておこうかなっ」
その時から頻繁に会いに来る、ある意味ストーカーさんだ。私が此処に居るのは彼のおかげなんだけど、そんな気がしないのは、彼の子供じみた性格からだと思う。私はいわゆるトリップというものをしたらしく、全く知らないこの時代に飛ばされたらしい。普通に生活してたらトリップしちゃうとか、何処のファンタジーだろうか。元の場所に戻れないということで、私は此処で暮らすこと決定。そしていろんな経緯で新撰組にお世話になることになった、みたいな。
『あ、これ総司君の?』
「え?あ、うん。そうだね」
『そういえば、廊下の掃除任されてたなー』
「もしかして…、それでするの?」
沈黙。そして考える。よく考える。結果、やめました。そっと畳んで廊下に置く。でも普通に畳むのアレだったから、少し雑に畳んでやった。
「お、珍しいな!名前が手伝ってるなんてよ」
「新八さん。お疲れ様です」
『新八さん、私は優しいから先程の言葉は聞かなかったことにしてあげますね。お疲れ様です、はいタオル』
「それで拭けってか?」
私が差し出したのは雑巾。廊下の掃除任されたからね。新八さんが謝ってきたので普通のタオルを渡してあげた。千鶴が。
「あんがとよ。ったく、名前ももう少し千鶴ちゃんみたいにおとなしくなれっつんだ。勿体ないぜ?」
『ほっといて下さいー。そもそも、私がおとなしくなったら気持ち悪いじゃないですか』
「……確かにそうだな」
『新八さんなんか嫌いです』
「なんて言やあ良かったんだよ!?」
嘘ですよと言えば、新八さんは「嘘でも言うなよ」と言って、私の頭に手を置いた。ガシガシ撫でているのか、ぐしゃぐしゃにしているのか分からないけど、こうされるのは嫌いじゃない。だからされるがままにしておく。
「猫みたいだな」
『え、なにゆえ?』
「はは!まあ、名前は名前じゃないと名前じゃねぇってことだ」
意味が分からない、というかそのままの意味だろうということを言う。だけど、新八さんは満足そうにしているから、何も言わなかった。ちなみに、未だに頭をガシガシされています。でもまあ、いっか。
おかえりなさい、
(ほらよ、土産に金平糖だ)
(わ!ありがとう新八さん!)
(よかったね名前ちゃん)
(うん。今からお茶入れて来るね)