『ぎゃああああああああああ!』
頓所に響く少女(?)の叫び声。その少女(仮)の正体とは、つい最近[こちら]に来た清水名前である。
◇いやがらせは愛情の裏返し
『総司君!』
私は朝から全力で居間に向かった。この際、寝巻きだとか関係ない。奴は絶対ここにいる!私は襖の前で足にブレーキをかけ、勢いよく襖を開いた。やっぱりここにいた奴をキッと睨む。当の本人はニコニコして「何?」とでも言いたそうな顔だった。
「朝から騒がしいなあ、もう。どうしたの?」
『おまえがそれを言うなあああああああっ!』
ばん!と総司君に突き出したのはカブトムシ。しかも生きてるカブトムシ。ごめんねカブトムシ、もう少しで自然に帰してあげるから待っててね。
「おいおい。仮にも女の子がそんなもん直で掴むなよ」
「左之さん何が見えてるんですか?」
『え、何それ。私が女の子に見えないってか?左之さんも仮にもってなんですか!』
嫌なくらいに素晴らしく怪訝な顔をした総司君。左之さんは私を見て、片手を顔の前まで挙げ「ごめんな」って言ってくる。仕方ないから許してあげよう(単純)
「え、名前ちゃん気付いてないの?文頭で少女(仮)とか言われてたよ」
『知ってるよ!あえてつっこまなかったのに…!』
「あはは、悪いことしちゃったね」
『思ってもないのに言わないでもらえますか?』
カブトムシ片手に朝から総司君とわーぎゃーわーぎゃー。そもそも総司君が悪いんだもんね!
「ていうか名前。その兜虫どうしたんだよ?」
『平助!聞いて聞いてっ。起きたら真横にいたの!これはもう悪質ないじめだよね?』
「げっ!そりゃあ朝からきついな」
『だよね!ていうことで総司君。カブトムシと私に謝りたまへ』
「たまへって何たまへって」
そう言って総司君にカブトムシを突き出す。気持ち悪いと顔に出てるけど無視だ無視。
「そんなこと言って、僕じゃなかったらどうするの?」
『え、違うの?』
「僕だけど」
『やっぱりな』
分かってた。分かってたけどね!朝からカブトムシ片手にわーぎゃーわーぎゃー。居間で総司君とわーぎゃーわーぎゃー。総司君の(悪質な)悪戯は今に始まったことではないけどさ。カブトムシて…。
『総司君の枕元にカブトムシの昆虫おいてやる!』
「それいいね。今度やろうかな」
『誰に?私に?』
私を見てケラケラ笑う総司君を見て、反省の色が欠片もないなと確信した。
そして一日が始まるのです
(てめぇら静かにできねーのかっ!)
(土方さん!総司君です総司君!)
(えー、酷いな名前ちゃん)
(どっちもだ!!)