08



私はまた、ひとり事務所を散策している。先程ごみ捨て場まで付き合ってくれたレンくんとはそのままばいばいした。少しの間だったけど、話せてよかったなあ、なんて。音楽が大好きなことも、レンくんの口から直接聞けて嬉しかったし。仕事してる姿はもっとキラキラしてるんだろうなー。






『シャイニーに頼んだら見学させてくれないかな』






今度頼んでみよーっと。雑用しながらなら大丈夫でしょ!って、それじゃ見れないじゃん!!まあ、いっか。次はどこ行こうかなー。この事務所広いし、下手に歩き回ったら迷子になりそう。






『って、ここどこ!?』






思った矢先にこの始末!!考え事しながら歩いてたからだ。くそう。こんなことならレンくんと元の場所まで戻れば良かったちくしょう。あの時の私は何を過信していたんだ。






『ここ無駄に広すぎるんだよー!!
!!』

「何1人で叫んでんだ?」

『ぎゃっ!!!!』






1人だと思っていた事務所の裏庭的場所は、どうやら1人では無かったらしい。声からしてこれは翔くんだ。どうしよう。振り向いたら抱きつく自信しかない。






『し、翔くん…っ!!』

「よっ。なんだー?名前迷子になってるのか?子供みたいだな!」

『うっ。だってだって!この事務所広すぎるんだよー!うわーん!』

「おわ!?…っ、おいバカ!!」






ごめんなさい。どさくさに紛れて抱きついてますはい。いや別に抱きつきやすいとか思ってない。顔もにやにやにしてない。






「ったく!こんな場所、迷う所でも無いだろー?」

『いや、迷う場所だよ。未知の世界だもの。何ここ無駄に広すぎ。お家に帰りたい』

「はいはい。で?何してたんだ?」

『ゴミ捨て終わったからさあ、事務所散策してみようかと思って歩き回ってた』

「迷子になったのは自分のせいじゃねーか!!!」

『迷子になりたいお年頃なんだいっ!』

「そんなお年頃俺様には無かったけどな!!」





こんな会話してますが、心の中では翔くん可愛いで溢れてます。変態でごめんない翔くん大好き。






「ていうかよー、お前と話してると前々からお互いのこと知ってるような気がするんだが…、前にどっかで会ってるか?」

『(!?)っそ、そんなこと!!だって翔くん、テレビとかラジオで大活躍じゃん!会ったことなくても、私は知ってるようなものだし!』

「そうかー?んー。それもそうだな!!俺様たちも知名度が上がってきたってことだよな!!」

『そうそう!』






バレたら藍ちゃんに殺される。藍ちゃんのパンチ飛んでくる。二人で話しながら寮に向かってる時に、



「別に隠してる訳じゃないけど、ボクがソングロボットだっていうことは誰にも言わないで。めんどくさそうだし。あとキミも。別の世界から来たってことは秘密にしておいてね。社長から今連絡入ったから」

『え!なんでシャイニング知ってるの!?』



謎だった。どこかに盗聴器でも仕掛けられてるんじゃないかと、自分のポケットとか服の裏とか確認したけど無かったんだよね。恐るべしシャイニング早乙女。






「そうだ。お前、藍と妙に仲良かったよなー。昔からの知り合いなのか?」

『さっきもレンくんに言われたけど、そんなに仲睦まじく見える?やだ恥ずかしい照れる』

「何頬を染めてんだよ…」






翔くんがげんなりした顔で私を見てくる。そしてね、今更なんだけど翔くん。






『私そろそろ、寮に帰りたいな!』

「送ってけってことか!?」






(彼のため息が聞こえた気がした)


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