07



「Ms.名字ー!今からお前はぁ。雑用係デス!!!」

『うわああああん!!雑用いやだああああああああ!!!!』

「悪いな名字…」

『全力で龍也さんのお手伝いさせていただきます!!』






わたしがトリップして1週間。お馴染みのキャラとも全員会えました。ていうか話飛びすぎ。番外編ですればいいとか、そういうことじゃない。






「という訳でぇー!!リューヤさーん!後は頼みましたよー!!」

『うわ!窓ガラス!ちょ、危ないよシャイニーさん!!!って、もしやこれを片付けるのも…』

「ああ、俺等なんだ…」

『シャイニーのばか!!!!』






というわけで私の初仕事は割れた(割られた)ガラス処理でした。














『ごみ捨て場遠いなあ。ガラス処理のついでに、部屋のゴミも捨てようと持って来たけど失敗だったか』






誰もいない廊下で、私はひとりゴミ袋と処理したガラスを両手に抱えてとぼとぼ歩く。あーもう。藍ちゃんに会いたい。みんなに会いたい。翔くんはすはすしたいよー。でも今日は龍也さんに会えたしかっこよかったし頭撫でてもらっちゃったからもうそれだけで幸せ。んふふ。雑用係も悪くないなー…………っは!私は今何を考えていたんだ!?私ドMじゃないし!!うん、普通の子。私は普通の子…。うわああ!やっぱり雑用係も悪くないよー!!もうだめだ、洗脳されちゃった…。

少し気分が落ちて俯き具合に歩いていたから、俯いたままの視界に誰かの足が入って来るまで、人が立っているなんて知らなかった。






『ん?…足!?わっぷ…っ!』

「おっと。大丈夫かい?」

『ぎゃっ!れれれれれれ、レンきゅん!!』

「おや。少し前に出会った子猫ちゃんじゃないか。こんな所で会えるなんて運命だね?」

『おおおおおう。ちょっと鳥肌が…っ!でもそんなレンくんが好きだよ!』

「嬉しい告白だねー」






くそう。これが神宮寺家のフェロモンですかそうですか。

どうやら視界に入った誰かの足はレンくんのものだったらしい。そのまま私は背中にダイブして顔面ぼふってなりました。いい匂いしたとか思ってない。いやちょっと思った。でもこれは私悪くないと思うんだ!だってだって匂いを嗅ごうとしたんじゃなくて、勝手に!勝手にふわっと漂ってきたんだもん!!






「その荷物はどうしたんだい?」

『あ、うん。シャイニーに雑用係任命されちゃって。まあ、龍也さんのお手伝いみたいなものなんだけどね。その初仕事?ごみ捨て場遠くてさあ』

「へえ?ちなみに子猫ちゃん、」

『とりあえず子猫ちゃんやめよーか。で、何?』

「せっかく可愛いのに。じゃなくて、ごみ捨て場は逆方向だった気がするんだけど」

『え……』






ぽかん、と間抜け面をレンくんへ向ける。少しおかしそうに、困ったように笑ったレンくんに、先程の言葉を頭でリピートさせた。ごみ捨て場、逆方向ですって…?






『どうりで着かないわけだよ…っ!!また歩かなきゃいけないのー!?』

「オレも手伝おうか?」

『え、いいの!?あ。いや。大丈夫大丈夫!そんな重くないし!最近は運動不足だったからさー!レンくんこれからお仕事でしょ?今そこの部屋から出てきたわけだし。あ、もしかして何かの打ち合わせだった?』

「レディにこんな重たいもの持たせるなんて、ましてやそれを見たのに放っておくだなんて男じゃないだろう?それに、打ち合わせもばっちり済ませてきたし、後は帰るだけだからね」






ぱちん、とウインクをされてしまった。様になってる、かっこいい。レンくんもっと絡みにくいかなと思ってたんだけど、春ちゃんと会ったからかな?雰囲気柔らかいや。上がる口角は我慢できず、そのままわたしはにやけてしまった。






『えへへ、うん!ありがとう!なら手伝ってもらおうかな!あ、こっちの軽い方で、』

「何言ってるの、どっちも持つから。ほら貸してごらん」

『ええ!でもでも悪いよ!?そしたら私いる意味が…!』

「オレはここからのごみ捨て場までの道のり、キミの時間を貰えるんだ。それくらい当然だろ?キミのこと、いろいろ知りたいしね。アイミーとあんなに仲良くしてる女の子、初めて見たし」






えー?仲良しに見えたかなー?なんて、へらへらしてしまった。この会話、藍ちゃんに見られたり聞かれたりでもしてたら、全否定だったんだろうなあ。考えていたら、レンくんがゆっくり歩き出す。私も隣に並んで、さっき歩いてきた方向に足を出す。レンくん背が高いな、とか。さっきゴミ袋取るときに手が伸ばされたけど、指長くて綺麗だったなあ、とか。そんな考え事が頭を巡る。あ、そうだ!






『ねぇ、レンくん!』

「なんだい、子猫ちゃん?」

『私も、レンくんのこともっと知りたいな!』

「え?」









(少し照れたように、彼は笑った)


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