05



『わあああああ!!ここが寮!素敵住宅!!夢の国万歳!!』

「うるさい、近所迷惑、ていうかボクに迷惑」

『ねぇ、藍ちゃん。私と出会って1日も経ってないはずなんだけど、なんだかとても辛辣だね』

「気のせいじゃない?」





前回藍ちゃんから了承をもらって、ただいま寮の目の前にいます!!ボクは許可出した覚え無いんだけど、って怪訝な目をした藍ちゃんは放っておく。そんな藍ちゃんからは私に対してアイドルスマイルなんてものは向けてくれません。さっきから向けられるのは敵意か呆れか哀れっていう目です。藍ちゃん、私は悲しいよ…っ。でもそんな藍ちゃんも素敵!






『藍ちゃんは翔くんとなっちゃんでしょ?どう?楽しい?』

「どうって…、」

『ん?』






玄関に向かいながら、隣を歩いてくれる藍ちゃんに聞いてみる。きっと私の顔は気持ち悪いくらいに惚けているんだろうなー。ロボットで、人間の感情が分からないと言う藍ちゃんに、あの2人は少々刺激的過ぎると思うけど、分かりやすいから藍ちゃんにとって良い影響なんじゃないかなって、いつもゲームしながら思ってた。

(そんな3人のほのぼの日常を妄想してた、なんて言ったら次こそ通報されるから言わないけどねー)






「…別に、」

『(こ、ここに二次元エリカ様がいる…)別にってことは無いでしょ?変わったことだよ、生活で!』

「変わったこと…」

『なんでもいいよ?』

「………………毎日、」






ゆっくりと話し始めた藍ちゃんに耳を傾けて、うんって返事をする。少し戸惑ってこっちを見た藍ちゃんだったけどすぐに前を向きなおす。少し俯いてるけど、どうやら話してくれるようだ。ていうかこんな時に不謹慎だけど頭どうなってるの触ってもいい?






『毎日、…ショウもナツキもうるさい』

「元気だもんねー、あの2人」

『先輩に対する行儀もなってないし、ナツキなんかはいつも抱きついてくる。あと突発的。ナツキが作る料理だって、人間の手からあんなものが作り出されるとかインプットされてなかったし、」

『あれはー、あ、あはは。特例だと思うな?』

「ショウはショウで感情的だし、きゃんきゃん煩い。ボクがパソコンと向き合ってると、ちょっとは休めって。ボクがロボットだって知ってるはずなのに、心配もしてくる」

『だって藍ちゃんのこと大好きだもん』

「え?」






揺れる瞳が私に向けられる。こっち見ちゃやだよもう。私今すごく顔惚けてる。にやにやしてるきっと。少し困ったような表情をして、いつもの仏頂面に戻ったけど、私の言葉を待ってくれているらしい。何この子もうほんと可愛いね。ていうかさっきも思ったけど頭触っていい?いいよね?

もう我慢ができなかった私は、藍ちゃんの隣から移動して前に出る。そして手の届く位置まで移動したら、藍ちゃんの目の前になった。藍ちゃんが少しびっくりしてたけど、お構いなし!やっぱり触りたい…っ!






「ちょっと、なに……っ!」






ぽん、っと手を藍ちゃんの頭にのせる。うわ!柔らかい!てかさらさら!かちこちしてそうなイメージだったのにさらさら!






『藍ちゃんさらさら!気持ちいい!わしゃわしゃしてもいい!?』

「………何してるの」






はあ、と溜息を吐いた藍ちゃんが私の手を払う前に、私は惚けてしまっている顔のまま藍ちゃんに言葉を返す。






『藍ちゃんがロボットだから、とか。そんなの関係ないんだよ、きっと。あの2人にとって、藍ちゃんは先輩だし大切な相手だから、そうやって心配もするし、気になったりもする』






ぴたっと、払う手を止めた藍ちゃんの頭を好きなように触りながら、私より背の高い彼を、真正面から見る。






『私も、藍ちゃんが大好きだよ!』

「何……、それ…。ボクは君のこと好きじゃないんだけど」

『一方通行!!でもいいよーだ!』

「意味、わかんない……」






そう言った藍ちゃんは少し考える素振りをしたけど、私がまだ頭を撫でているのに気付いて、今度こそぱしっと払われてしまいました。







(気づいたら玄関の目の前でした)



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