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こんにちは。前回に引き続き、今回は先輩組のお仕事見学をさせていただいております。そして、先ほどの出来事を簡単に説明させていただくと………



「おい女。お前はこっちへ来い」

『……は…?』



とまあ、こんな感じです。ちなみにリアル会話です。先程カミュと交わした言葉はこれでした。そして訳も分からず、私は移動車で貴公子カミュの隣に足を綺麗に閉じ、お利口さんにして座ってる訳ですが…。意味分からない!なんでこうなった!?朝藍ちゃんに現場連れてけー!って言うとこは良かった!完璧だった私!その後のカルナイでの活動も見学できてうはうはだったよ!?そして午後!個人の活動に入るからって私は帰ろうとしたんだよ。いやまあ、そりゃ欲を言えば藍ちゃんに付いて行きたかったさ。次の現場は翔くんとなっちゃんと同じだって言ってたし。なのになんでこうなった!?





「おい愚民」

『はい!!!』

「良い返事だな。………単刀直入に聞く、お前は早乙女と何の関係があり、なぜ恩を受け今の寮に住んでいる」

『早乙女…、シャイニー?』

「あやつの考えは如何せん読みにくい。更には貴様みたいな愚民、ましてや素性も定かではないお前は、なぜここまでしてもらえている」

『…………』





……って、言われてもなあ。シャイニーは本当に思いつきのように言ったものだったし、まあ関係と言われれば、アイドル(藍ちゃん)の上に伸し掛かっていた女と、所属事務所の社長、といったところだろうか。でもトリップしてきていることは内緒な訳で…。気づかないうちにそれが暗黙ルールになってたし、他の人に知られたら、また藍ちゃんにロケットパンチやられそう。…….あれ痛いんだよ?





「お前は一体何者だ」

『はっ。他の人は騙せても、貴様だけは騙せなかったようだな…くっくっく……はあーっはっはっは、』

「そういう茶番は良い」

『すみませんでした』

「ふんっ。まあ良い。お前が誰だろうと、俺の邪魔をするようであればどうなるか……分かっているだろうな?」

『それはあのー、スティック的な何かが発動しちゃう感じですかね?』





その言葉を最後に、目を瞑ったっきりのカミュ。なんだったんだ…。ていうか、それを言う為だけに私は連行されてるの?次の現場ってどこだ、何も聞いてないぞ。てか移動車もすごいなあ。運転席との間にはちゃんと仕切りがるし。まあ、だからさっきあんな変な芝居できたんだけど…。てかカミュ静かすぎない?寝てる?寝てんの?隣で少し俯き、腕と足を組んだまま身動きひとつしないカミュの顔をそーっと見る。やっぱり綺麗だなあ。肌も白いし。あとこの髪!何この見るだけでも分かるサラサラ感とキューティクル!触りたい触りたい触りたい。あ!だめよ名前!髪なんて触った日には氷漬けにされちゃう…っ!





「………何をしている」

『ぎゃっ!!!!お、お、起きてたの!?!?』

「得体の知れない物がある空間で、俺が寝る訳なかろう」

『私人間としてすら認識されてない!?』





しかも物って言った。物って。私は物じゃないし。人間だし乙女だし女の子だし!なんだよなんだよ!カミュの甘党!!今度塩プレゼントしてやる!!!





「…………良かろう」

『は?……カミュ塩好きだった…?』

「なんの話だ。………ふっ。どうせ、俺のこの美しい髪に惹かれたのだろう。貴様は特別に、触ることを許可してやろう」

『え!?』





い、いいの…?まじで?ちょ、また目を瞑っちゃったんですけど!!!触って良いの!?私は心の整理も付かないまま、カミュの髪の毛に手を伸ばす。車の揺れで、さらりとカミュの髪が靡く。CMきてもおかしくないよね。いいなあ。ゆっくり、ゆっくり。…そしてようやく、カミュの髪の毛に指が触れた。





『ほあああ…!やばい。カミュの髪の毛、思った以上にさらさら!うわ、これ指でといてるのに引っかからないし!なに、なんのシャンプー使ってるの!?…いや、これはリンスの方か…。はっ!!トリートメント!?』

「ふんっ。当然だ、俺を誰だと思っている。そして貴様にはもう1つ特別をやろう。貴様は今日から俺の奴隷だ」

『…………………え?』

「聞こえなかったのか。ならばもう一度言おう。貴様は今、この時から俺の奴隷だ。分かったか」

『聞こえてましたよ、聞こえた上での疑問符だったんですけど。今の!どこに!私がカミュの奴隷になる決定的瞬間が!?』

「俺のこの髪に触れてからだ」

『罠だったのおおおおおお!?!?!?』





心の整理。やっぱりするべきだった。タダで触らせてくれるなんて、あのカミュに限ってありえないんだ…っ!なのに私ったら目の前の欲に……。このばか変態!





「俺が呼んだらすぐに来い。分かったな」

『…………いや、「返事は」……うっす!!!』

「もっと品のある返事にしろ、この愚民が」

『………わん』





冗談のつもりで泣きながら言ったこの返事は、意外と甘党国王カミュ様のお気に召したらしく、今後はこれで返事することとなった。


(選択肢どこで間違えたんだ)


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