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「…………………」

『…………………』

「…………ふん、」

『…!?』



―――――――びゅんっ



「ちょ…、なに?…はあ。カミュ。あんまり名前を苛めないで。ボクがめんどくさい」

「…はっ。別に何もしてなどいない。そこの小娘が勝手に怖がっただけだ」

「顔がこえーんだろ」

「…同じ言葉を貴様に返そう」

「んだと、ぁあ゛!?」

「ちょちょちょ!たんまたんまー!!ミューちゃんもランランも、喧嘩はだめだからねー!?」

「黙れ寿」

「っるせぇぞ嶺二」

「レイジ、うるさい」

「うわああん!!みんながぼくちんを苛めるよ〜っ」

『…っわっぷ!!!!!れ、嶺ちゃ…っ!く、くる……し…!』





皆さんこんにちは。改めまして名前です。うたプリ世界にトリップした名前です。本日は、えー、お日柄も良く…。って違う。お日柄良いのは本当だけど。朝起きて、天気も良くて、なぜだか頭が覚めきっていた私は、今日休みだということを利用して、藍ちゃんの部屋へ大急ぎで行き、今日仕事連れてって!!!と大声を上げながら部屋にお邪魔をしたのは記憶に新しい。まさかオーケーが出るとは思っていなかったけど、粘りに粘った結果「好きにすれば、」とお許しを頂くことができたのです。そんなこんなで、本日はカルテットナイト4人の楽屋にお邪魔をしている訳ですが…。





「………」

『……(砂糖。やばい。尋常じゃない)』

「何を見ている愚民が」

『…っ!(これは…!生で愚民呼ばわりされたこの感動…っ!一生忘れない!!!)』

「ミューちゃん!めっ!ほらー、名前ちゃんが震えてるでしょー!」

「ふんっ」

「レイジ、あれは怖さからじゃないから気にしなくていいと思うよ」

「つかてめぇ。なんで楽屋に入ってんだ」

『え!?いや、あのー。この前嶺ちゃんのお仕事見学させてもらって、それで火が付いちゃったというか…』

「っち。めんどくせぇ」

『蘭丸ぅ!そんなこと言ってー!もうっ』

「あ゛!?っくそ!やめろ!!!おい頭撫で回すんじゃねぇ!!!!!…っおい、藍!!お前が連れて来たんだろ!?」

「知らないよ。名前が勝手に付いて来ただけで、ボクは連れて来て無いし」





蘭丸の頭をわしゃわしゃする。一匹狼だ…!狼がここにいる!!そんな態度したって無駄なんだからね!君が春ちゃんと2人きりになった途端、甘えたになるのは知ってるんだから!!!一匹狼気取ってるのに、可愛い奴め…っ!ってなる瞬間があるの知ってるんだから!!!





『あー!堪能した!』

「っくそ…!お前のその馬鹿力どっからくんだよ…」

「名前ちゃん、れいちゃんも頭して欲しいな〜」

『嶺ちゃんはいい』

「がびん!!!!!なんで!?ぼくちんの扱いひどくない!?」





泣く嶺ちゃんに、冗談だよーと笑いながら返す。藍ちゃんは溜息を吐いて、蘭丸は舌打ち。カミュはといえば…。





「……………」





足を組んで、優雅に砂糖をどばどば入れた紅茶を飲んでいた。いや、今ではこんなツンケンした貴公子様だけど、春ちゃんにはデレデレしてるんだよねー。あ、やばい。考えてたら頬が勝手に緩んでしまう。って、あ…。よだれが…。





「おい、そこの女」

『ふ、は……ひっ!?!?!?』

「何をジロジロと不躾に見ている」

『いやあの…(ごめんなさい、あなたと春ちゃんがイチャイチャしてるところ想像してました。おいしい展開期待してます)』

「ふ…。そんなに見なくとも許しを請うことができれば、やらんでもない」

『え?』

「この最高級の代物である、砂糖が欲しいのだろう。俺の寛大さに感謝するんだな。愚民である貴様にくれてやる」

『あ、ありがとう…ございます…?』





訳の分からない砂糖の受け渡し。あ、もしかしてよだれ垂らしてるのは砂糖見てたからって勘違いされた…?まあ、下手に変態扱いされるより全然良い。砂糖好きってことにしておこう。ていうかカミュ、砂糖くれるんだね、優しいね。なんて、私の頬はまた勝手に緩む。ふへへっと変な笑いに、藍ちゃんと蘭丸が怪訝な目で見てくるけど気にしない。なんたって今日はカルテットナイトのお仕事見学日だ。急に決めたけど。藍ちゃん曰く、今日のスケジュールは午前中がグループ。午後からは個人の番宣や撮影、打ち合わせなんかが入ってるみたい。





『よし!4人の勇姿を見届けるぞー!!!』

「イェーイ!名前ちゃんかっこいい〜!」

『嶺ちゃんかわ………っ!!!!!(ブッッッッ)』





あ。やばい。嶺ちゃんのあまりの可愛さに今まで出たこと無いような血の量が鼻から出た…。大丈夫?私の血、今日巡り良すぎない?てかここ最近、血の循環良すぎない?





「名前ちゃん平気!?」

『もちろん!!』

「抑えた手から血が滴り落ちてんぞ。てかてめぇ!!楽屋汚すんじゃねえっ!!」

「ランマル落ち着きなよ。ほら名前、これ雑巾」

『え、私の止血より床の掃除優先?』

「ふん。これだから砂糖も取らぬ弱い奴は…」

「カミュは一旦その手の砂糖を置いた方が良さそうだね」

『やめて藍ちゃん!カミュから砂糖を取ったら何が残ると言うの…っ!?』

「全体的に砂糖を摂取しすぎた身体。血の巡りや状態もあまり良いとは言えないね。でも不思議なことに、カミュの身体は砂糖を摂取しすぎても異常が無いんだ。血の巡りにも特に影響は無し。大きい病気にかかるリスクも、分析する限りでは高くはないから…」

『藍ちゃんは主治医か何かかな?』





分析って。藍ちゃんもしかしてカミュのこと透視してるの?

4人プラス1人の楽屋で、変な茶番や普段の彼らを見る。向こうの世界では到底ありえないこの目の前の奇跡に、私は涙ではなく、血を流すこととなった。輸血パック持ち歩くべきかもしれない…。彼らの楽屋で時間まで過ごし、呼ばれた4人の後ろを付いて行く。堂々としておけば、マネージャーにでも見えるでしょ!って堂々と歩いていたら、目立つからやめろと蘭丸に怒られた。そして私は4人を待つ、キラキラとした現場へと足を踏み入れ、カルテットナイトの人気と、存在していることを改めて実感することになる。


(ここに、彼らは生きている)


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