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『龍也さん!本当にいいのー!?』

「ああ。社長に言われてな。お前に嶺二の仕事を見学させろって」

『やったー!ありがとう社長!』





あるスタジオで、私は両腕を大きく上に広げて喜ぶ。なんて言ったってあの嶺ちゃんの仕事現場!一度は見てみたいあの仕事ぶりを、今日ここで生で見れる。そんなことを聞いて喜ばずにいられる訳がないっ!





『龍也さん!嶺ちゃんのスタジオはどこですか!』

「待て待て、行き先も知らないのに走ろうとするな」


ガッ!!!


『…龍也さん、私捕獲されるようなことまだしてません』

「お前から目を離すとどっか迷い込みそうだからな」





首根っこ、というか今日はパーカーを着ていた為、フード部分を掴まれた私。ちょっと扱いが雑になってきたとか思ってない!断じて!龍也さんは私を心配してるからこそのこの行動なんだ!だから…、だから別に首が絞まってるとか思わないよ!





『で、嶺ちゃんのスタジオはどこですか?』

「ちゃんと連れてってやるから、大人しくしてろって」

『ふふふ。嶺ちゃん嶺ちゃーん!』

「なんだ?名字は嶺二ファンなのか?」

『いいえ違います!!!!』

「おま 「名前ちゃん即答!?」
嶺二…っ!?」

『え!あ、嶺ちゃんっ!!!』

「やほやほー!嶺ちゃん登場だよーん!」





声の聞こえた方に顔を向けると、そこにはなんときゃぴきゃぴしている嶺ちゃんが。ウインクにピースに舌ぺろの三大要素。これできるの嶺ちゃんだけだと思うなあ。音也できるかもー、って思ったけど、音也は音也で違う明るさだから、たぶんこういうことはできないよね。そしてそんな嶺ちゃんを見て呆れているのが龍也さんです。





「嶺二!お前仕事は!」

「ちょっと休憩が貰えたんだよー!二人とも遅いからぼくちん迎えに来ちゃったー!」

「来ちゃったー、じゃねえ!待ってろっつったろ?」

『嶺ちゃんのお迎えー!!!はいたーっち!』

「いぇーい!」

「お前らなあ…」





私と嶺ちゃんがハイタッチしてる後ろで龍也さんのため息がこぼれた。にこにこな嶺ちゃんとは真逆で、龍也さんはすごく疲れた顔をしている。ああ、龍也さんがあんな顔に…っ!





「ねーねー名前ちゃん?」

『ん?なにー?』

「ぼくのファンじゃないなら、名前ちゃんは誰のファンなんだろー。嶺ちゃん即答されて悲しかったなあ?」

『………てへっ』

「ぼくのファンじゃないって言ったのはー、この口かーっ!」

『い、いひゃいいひゃい!』

「あっはっはっ!名前ちゃんよく伸びるねー!」





嶺ちゃんに両頬を掴まれて、びよーんと伸ばされる。痛くて涙が…。それを見た龍也さんが、また呆れてため息をついている。それでも、こら嶺二って怒ってくれて、嶺ちゃんもぱっと手を離してくれた。うう…、まだ痛い。頬をさすっていたら龍也さんが大丈夫か?って。





『だ、大丈夫です…っ!』

「ならいいが…。嶺二、迎えに来たなら早く案内してやれ。俺は今から用事があるからな」

「任せてチョーダイ!」

『え。龍也さんどっか行っちゃうの…!』

「…ふ。大丈夫だって。あと迎えに来てやるからよ」





あまりに私が必死だったのか、落ち着かせるように龍也さんが頭にぽん、と手を置いてくれた。なにこれすごく安心するんだけど。これが大人の魅力か。あ、嶺ちゃんも結構大人だったそういえば。





「帰りはぼくが送るから龍也先輩は迎えに来なくてもいいですよ」

「は?おま、」

『嶺ちゃんが送ってくれるの!?』

「うんー!ほらほら、早く行かないとぼくも休憩が終わるからさ!」

『うーん』





こんな嶺ちゃんだけど、彼もアイドルな訳だし、車で送ってもらうのってなあ。なんかまずいんじゃないの?あ、いや別に龍也さんならいいとかそういうのじゃなくて。





「ほらほら行っくよー!」

『え!?ちょ、嶺ちゃん!?』

「嶺二…っ!」





だんだん龍也さんの姿が遠くなって、その反対には嶺ちゃんがものすごい笑顔で私の腕を引っ張っていた。



(いたずらが成功したみたいな、)



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