09
どうしてこうなった。
『あ、の。蘭ま…黒崎さん!』
「あ゛?」
『ひ…っ!』
あれから翔くんに寮まで送ってもらい、私は談話室にいた。なんだかんだと言いながら、龍也さんの話をふったらすぐに心を開いてくれて、次暇が合う時にDVDを一緒に見ようという約束もできてしまった。顔のにやけが止まらず、談話室まで歩いて来たところ、テーブルの上にカルテットとスターリッシュメンバーが表紙になっているそれぞれの雑誌があることに気づいた。私はこっちに来てまだ見たことが無かったし、何を隠そう、私はみんなのファンなのです。だからね、これを見たいと思うのは自然のこと…。そのまま談話室のソファーで座って見ていたら、なんとあの丸ちゃん先輩がやって来たではないか!でもこの沈黙が痛い…っ!
『ご、ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい』
「あ?何土下座してんだよ」
『お、怒ってるんじゃ…?』
「別に。怒っちゃねぇよ」
土下座しながら頭を両手で覆い隠し、絶対飛んでくると思った足から防御をしようとしていた。でも怒ってないという蘭…、黒崎さんに、わたしは恐る恐る片目を開けて視線を向ける。オッドアイの瞳は、私が読みかけていた机の上にある雑誌に向いている。自分の写りとか、そういうの見てるのかな。
「おい」
『ひっ!!!』
「なんでビビんだよ?てかお前、俺らのファンなのか」
『う、え?あ、はい!もちろんです!!カルナイもスターリッシュも!私の大好きなグループです!(春ちゃんに甘えるあなたも大好きです!)』
「ふん」
ぎゃんっ!そっぽ向かれた!!なんで!?蘭丸もともと目つき悪いから怖いんだよー。でも猫とか春ちゃん見る目は優しいし。ていうかあの顔反則でしょ可愛すぎるわばか。私をどうしたいんだ!!
「…、おめぇ」
『え?』
「っ!なんでもねぇよ!」
『!!!』
ら、蘭丸が…っ!照れている!!なんで!?どうして!?自分たちのファンだって分かったから!?可愛いところあるじゃんか蘭丸ぅうぅう!!ほっぺ赤いし!
『ら…黒崎さん!あの、』
「それ」
『ん?』
横に顔を向けている蘭丸に、私は呼びかける。チラッとこちらを見たと思ったら、すぐに逸らされた。そして先程のセリフだ。それって…。どれ?
「…その黒崎さんってーのヤメロ」
『え。ぇえ!?』
「さっきから俺のこと名前で呼びかけてんじゃねーか。大方、元々は俺のこと名前で呼んでたんだろ?」
『う…』
おっしゃる通りでございます。というか全員名前で呼んでましたすみません。
「無理にさん付けるな。なんか気持ちわりぃ」
『ら…』
「あ?」
『蘭丸がデレたぁあぁあぁあぁあ!!!!』
「ぁあ゛!?俺はデレてねぇよ!!!!」
(また一歩、近づいた)