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07
「ひっく……ひっく」
『泣いてるの?』
「う、え…」
『何かあった?』
「パパと、っ…ママ…がっ…」
居なくなっちゃったの。
―――ドクン、
『パパと、ママ…?』
―――ドクンドクンドクンドクン
「大丈夫かい?」
『!?』
「おっと、驚かせてしまったね。私はナイトメア。悪夢を体現させる夢魔だよ」
『夢魔って……いやあの、結構です。私苦しむの苦手なんで』
「結構ですって酷いな君は」
少し冷静さを取り戻した私は一息つく。さっきのはなんだったんだろうか。急に動悸が激しくなって苦しかった。ナイトメアっていう夢魔が出て来た時にあの光景も消えて、息も普通に出来るようになったけど…。怖い。私は、何か大切なことを忘れてるんじゃないだろうか。あの女の子…。
「見覚えが?」
『っ…』
「図星だな。まぁ、私は夢魔だからな。お前の心を覗くことだって出来る」
『ああ、つまり変態なんだ』
「違う!!」
怒鳴ったナイトメアは、咳ばらいをして話を続けた。
「早く、忘れてしまえばいい」
『どうしてですか?』
「名前。君の為だからだよ」
『私の……、』
ふわ、と近付いてきたナイトメアに顎をくいっと上げられた。私の顔を見てふ、と笑う。
「君には、幸せになって貰いたい」
『私に?今初めて会って、初めて会話をしたのに、幸せになってほしいって…』
「おかしいことかい?」
『…どうでしょう。よく分かりません。私が思う限り、あなたに幸せになってほしいと思われるようなことはしてませんし…』
「でもこの世界は、君を求めてる。この世界の人々は君を好きになる。必ずね。もちろん私もだ」
『…そんなの世界じゃないですよ、幻想です。誰にも好かれるなんておかしいです。人は人である限り、嫌いも好きもあるんです。だからこそ…』
「世界なのに?」
『……そうです。だからこそ世界なんです。というか読まないでくださいよ。セクハラで訴えますよ』
「だから違うと言ってるだろう!?…コホン。まあ今はまだいい。早くこの世界に馴染みなさい」
――深く、深く。
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