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03
どうも、名前です。ハートの城を目指しているのですが……遠いぜ畜生。
『こっちに来てどれくらい経ったか分からないし…。さっきまで夕方だったくせに、なんで朝なんだ』
この世界は私の居た世界とはいろいろ違うらしい。時間帯もバラバラだし、銃撃もしょっちゅうだってユリウスさんが言ってたな。
『…そんな世界で生きてく自信もないけど、そんな人たちと接触する勇気もないな』
溜息をついてまた歩き出した。でも、すぐ近くの茂みから音がするものだから、思わず止まってしまった。ガサッという音がする。熊だったらどうしようか、対処できないよ。あ、死んだフリ!そう思った私は、その場に倒れた。
ガサガサ―
「んー、あれ?おかしいな、時計塔に出るはずなんだけど…ん?」
…人でした。やば、これ死んだフリとかするんじゃなかった。恥ずかしいんだけど、起き上がれないんですけど。
「君、大丈夫?」
『……え?』
「ははっ、こんな何もない所でこけるなんて、おっちょこちょいだね」
『あ、ありがとう…ございます』
「いいっていいって。俺は騎士だから女性には優しくしないとね」
そう言った青年は、これまた美少年だった。何この世界、こんなに沢山イケメンいるなんておかしいでしょ。
「ねぇ、時計塔って何処にあるか知ってる?」
『時計塔ならあっちですよ。私、時計塔から来たんです』
「時計塔から?」
『はい。あ、自己紹介がまだでしたね。名前です。この世界では余所物って言うらしいですね』
「へえ、君が余所物か!初めて見た!俺はエース。ハートの城の騎士なんだ。よろしく名前」
『エースさん?よろしくお願いします』
「エースでいいよ。あと敬語も」
『…ありがとう』
話していくうちに、エースがユリウスさんと友達だということが分かり、なんだかほっとした。銃も出さないし、爽やかな人だし、悪い人ではないと思う。
「それより名前。ハートの城に行くんだったら案内するよ!」
『でも、エースはユリウスさんに用があるんじゃ…』
「いいよ、まだ時間あるから。俺がいた方が城にも入れるし」
『そっか…。ならお願いしてもいい?』
「もちろん。こっちだよ」
なんだろ…。なんだっけこの感じ。すごくいい人なのに、すごく優しく人なのに…なんでこんなに不安なんだろう。……ああ、分かった。エースの進む道が、ハートの城の方角と全く違うからだ。
『エース、そっちじゃないと思うな』
「え?こっちだよ。でもそうだな…ハートの城が見えないや」
『おーい、真逆だからって気付けー』
こうして私はエースの迷子癖という不安な部分を見つけた。任せていられないと思った私は、エースを引っ張りながらハートの城を目指した。
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