02
「誰だ!」
『え?』
振り返れば、髪を一束後ろに結んだイケメンさんの姿があった。ぽかん、としていると、イケメンさんはまた口を開く。
「お前は誰だと聞いているんだ。何故ここにいる。早く出て行け!」
『へ…。あ、すみません。気が付いたらここにいて…。その…、ここは天国ですか?』
「気が付いたら?お前…余所物か」
『?…まぁ、そうなりますね』
「なるほど。名前はなんて言うんだ」
『名前、です』
「名前からして日本人か。私はユリウス=モンレーだ。説明してやるから来い」
そう言ったユリウスさんはさっさと中に入ってしまい、私は慌てて後を追った。
「―――という訳だ」
『ゲーム、ですか。よく分かりませんが私は薬を飲んだ記憶がないんです』
「…ポケットの中を見ろ」
『ポケット…?』
わたしは両方のポケットに手を入れる。何も入れてないはずのポケットなのに、左手にはこつんと何かが当たった。取り出してみると、小瓶のような物だった。それを見るなりユリウスさんは溜息をついた。
「やはりな…」
『え…』
「名前。お前が意識を手放している間に奴に飲まされたんだ。チッ…勝手なことをしてくれる」
『奴って、兎耳の青年のことですか?』
「ペーター=ホワイトだ。ハートの城に滞在している」
あのお城に…。他にもいろんな所があるらしいけど、やっぱり直接見たいな。
『あの…、どれくらい経ったら元の世界に戻れますか?』
「一人では帰れん。お前が持っているその小瓶。此処で過ごしていくうちに、液体がまた溜まるだろう。液体が完全に溜まったら帰れるタイミングが来る」
『なるほど…あれ?もう溜まってる』
「ペーター=ホワイトと私に接触したからだ。此処の住民と接触したら溜まるはずだ」
『そうですか』
んー。なんかいろいろ難しい話をされたけど、とりあえずハートの城に行って、ペーターさんに話を聞かないと。
『私、ペーターさんに会って来ます』
「止めはしないが危険な奴だ。充分気をつけろ。それに…」
『銃、ですよね。気をつけます』
「ああ」
こうして私は、ハートの城を目指して時計塔を出た。
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