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01
「……さい。……きてくだ…い」
『んん……?』
「…きて…さい。起…てくだ…い。起きてください名前!」
『おおおお起きます起きます!なんか重い!なんか重いからっ』
誰かが私を起こす声が聞こえた。でも、寝ていたかった私はそれを無視して寝ようとしていた。けど、それは失敗に終わったようだ。起きろと言わんばかりの衝撃。見ればお腹に兎が乗っていた。…あれ?まだ夢?
「違いますよ。夢ではありません」
『心を読める兎だなんて…やっぱり夢だねこれ』
「なんでそこなんですか。普通はしゃべる兎のとこですよ。そんなことより!名前、あなたを迎えに来ました!」
『迎え…?』
「はい!僕と一緒に来て下さい!」
『えー。面倒くさい。ということで、誰か別の方を誘ってくださいおやすみー』
ぱたん、と草原に倒れた私を、睡魔はまた襲ってきた。今日は日当たりがいいもんね、当たり前だ。兎を抱いて寝るのもいいけど、なんか怖い。意識を手放そうとしたら、兎の溜息が聞こえた。
「ふぅ、仕方ないですね」
『…?何して…!ギャッ!人間!?』
「ああ、時間がありません。しっかり捕まっていてください」
『ちょ、落とし穴!?落とし穴の方に走ってないこれ、ねぇ!?』
「行きますよ」
『え、まっ…!心の準備があああああああああああ!!』
私の願いも空しく、兎は私を抱きかかえたまま穴に落ちた。最悪、最悪だ。どうして知らない人と心中しなきゃいけないの。あれ?なんか前が歪むよこれ。瞬きせずに目が潤ってるよ。
「もうそろそろ着きますよ」
『天国ですか?地獄ですか?』
「僕はあなたと一緒でしたら地獄でもどこまでも行きますよ」
『私の質問に答えてください』
そんな会話をしていたら、光が見えてきた。ああ、あれが天国の入口なんだろうな。どんどん近付いてくる光に、私は目をつむった。
『んん……あ、あれ?』
目を開ければ、何処か知らない場所。立ち上がり、景色を見てみる。そこには、不思議な世界が広がっていた。
『うわあ…、あんな所にお城がある。ハートだらけだ。あっちは遊園地?観覧車が見えるし。おお、屋敷も大きいな…』
初めて見る景色に心が躍った。そっちに意識を奪われて、後ろから近付く人影に私は気付くこともなかった。
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