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「名前って余所物だったのかー」
「だから武器持ってねぇんだな!」
『ここに生まれても持ちませんよ』
場所は変わって建物の中。ソファーやコーヒーの機械があるところを見ると、どうやら客室のようだ。ソファーに座る私の隣にはボリス。机を挟んだ所にゴーランドがいる。ここに来るまでにお互いの自己紹介なんかをして、気さくなゴーランドは私より年上なはずなのに、子供っぽいことが分かった。
「名前はもう滞在先決めてんのか?」
『うん。ユリウスの所。許可も貰えたしね』
「へー。あの時計屋さんがねー」
「あいつはいい奴だ!」
『ユリウスと仲いいんだ』
「おう!」
「おっさんが好きなだけだろうが」
「な、違ぇよ!」
ああ、つまり片想いなんだ。ユリウスが迷惑そうにしてる姿が安易に想像できるよ。
『今日ユリウスを誘ったんだけど…仕事があるから断られた』
「……それ嘘だな」
「だよな」
『え!?』
ゴーランド、ボリスの順にユリウスを嘘つき呼ばわり。仮に嘘だったとして、なんで断ったんだろうか。その質問を二人に投げかけてみた。
「そりゃあ、なあ?」
「…うん」
「「乗り物嫌いだ」」
『…乗り物?』
「ユリウスは乗り物が嫌いらしくてな!遊園地なんかは滅多に来ないぜ」
「ほんっと、辛気臭い奴だよなー。俺は気が合いそうにねぇや」
ボリスが頭の後ろで腕を組む。「楽しいのになー」なんて呟いてるゴーランドを見て、乗り物嫌いじゃなくても、この遊園地は行きたくない人いるんじゃないかと思った。下手したら死亡率100パーセントの乗り物もあると思う。
「それよりさ!なんで此処に来たの?」
『いや、ペーターが勝手に…』
「へー。あの宰相さんが」
心底驚くボリスに少し驚く。もしかしたら私に見せる態度と、私以外に見せる態度は違うのかも。エースに銃向けてたもんね…。
「帽子屋屋敷には行った?」
『うん。……双子に殺されそうになったけど』
「はは!あいつらすぐに斧振り回すからなあ!俺の友達だ。たまに撃ち合いすんだよなー」
『…………』
狂っている。改めてそう感じた私は、ため息が出た。
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